就労継続支援を改善

事業所の質の向上に役立つ 第三者評価の活用方法

任意で事業所の質を評価してもらう第三者評価への疑問点が多い、そんなかたはいませんか?この記事では第三者評価の実情や義務付けられている実地指導との違い、準備に必要な労力や期間、第三者評価ガイドラインの活用法など、第三者評価の全容を解説します。

第三者評価の実情

第三者評価とは

第三者評価とは、障害福祉施設のサービスの質を、公正・中立の専門的な外部機関に評価してもらう制度です。評価は「a、b、c」の3段階評価。評価結果は自治体のHPに掲載されます。第三者評価を受ける場合は、事業所が料金を支払い評価機関に来てもらいます。

また、第三者評価を受けるための留意点が書かれた第三者評価ガイドラインは「社会福祉法人 全国社会福祉協議会」のHPで公表されていてどなたでも閲覧できます。

第三者評価ガイドラインには下図のとおり「□□という取り組みをしていたらa評価」「△△までしかしていなかったらb評価」というように、評価基準が明確に記されています。

(※画像:第三者評価ガイドラインより抜粋)

一応、評価結果は自治体のHPに「a評価、b評価、c評価」で掲載されるものの、優劣やランク付けが目的ではありません。

あくまで現時点でのサービスの質の達成度を示すものであり、事業所がより質の高いサービスを提供できるように導くための評価制度です。

障害福祉事業所を評価する第三者機関の概要

第三者評価は、事業所を管轄する自治体から認証を受けた第三者機関によって実施されます。第三者評価のメンバーとして実際に評価に携わるには、自治体が主催する研修を受講する必要があります。

評価機関の数は自治体によって異なり、事業形態も株式会社や特定非営利活動法人(NPO)、一般社団法人、合同会社、社会福祉法人などさまざまです。

また、たとえば社会福祉士のように、第三者機関に所属していながら障害福祉サービスの現場で働いているかたもいます。

実地指導の自主点検表と第三者評価ガイドラインとの違い

障害福祉サービス事業所は数年に一度、事業所が法律に基づいた正しい税金の使いかたができているかを審査される「実地指導」を受ける必要があります。

実地指導を受けるには事前に色々な準備があり、その一つが自主点検表に記載されている内容を達成できているかのチェックです。(詳しくは「あなたの事業所は大丈夫? かならずやってくる実地指導 – はたらくBASE」「自主点検表で事業所の健全性をはかろう – はたらくBASE」をご覧ください)

実地指導や自主点検表の自主点検はすべての事業所の義務であり、実地指導では事業所が法律に則った最低限の運営が出来ているかどうかが見極められます。

一方で、第三者評価は義務ではなく任意です。また、第三者評価ではサービスの質が評価されます。

第三者評価ガイドラインには、どのような事柄に取り組めば利用者にとって質が高い支援ができていると評価されるのかがとても細かく記載されています。

事業所が正しく運営されているかの土台を確認する作業が、実地指導や、自主点検表のチェックであるとすれば第三者評価はその一段上の、より良いサービスを評価する制度です。

第三者評価を実際に受けるメリット

実際に第三者評価を受けるとその結果が自治体のHPに掲載されるため、自分たちの事業所は第三者評価に則った運営をしていると明言できるでしょう。

第三者評価は義務ではなく任意であるため外部に対するひとつのアピールになると思います。

また、障害福祉サービスに精通していて、福祉業界での仕事を極めたいと考えている人にとっては、第三者評価を受けている事業所の評価はとても高いと思います。

さらに、第三者評価の経験はスタッフの自信につながります。第三者評価の準備には多大な労力がかかるものの、福祉業界で働くうえでの実力は非常に向上すると思います。

第三者評価を受けるタイミングは経営者次第

第三者評価を受けるには数十万単位の金額が必要となるため、実際に第三者評価を受けている事業所は母体が大きかったり、経営的に安定していたりする事業所でしょう。

一応、新規に事業所を開設するさいに行政に事業所立ち上げを申請する段階で、申請書のなかに、第三者評価を受けるのかそれとも受けないのかについて記入する項目があります。

最初から第三者評価を受けるつもりでいるのであれば「受ける」にチェックを入れます。もし「受けない」にチェックをしたとしても、ペナルティなくあとから受けることが可能です。

新規に参入した事業所が開所後どのくらいで第三者評価を受けたほうがいいという指標はなく、利益が安定しているのであればタイミングは経営者の判断になると思います。

第三者評価を受けている事業所が圧倒的に少ない理由

第三者評価を受けるメリット自体はあるものの、実は障害福祉サービス事業で第三者評価を受けている事業所は非常に少ないのが現状です。

第三者評価がそこまで浸透していないのは間違いなく、多くの事業所が避けているといえるかもしません。

なぜなら、金銭面でも労力の面でも多大なコストがかかり、また第三者評価を受けたからといって優遇措置のような大きなメリットがあるわけではないからです。

第三者評価には多大な金銭的・人的コストが必要

第三者評価で必要となる金銭的なコストは各評価機関によって異なるものの、一事業所あたり数十万単位にも上ります。

また現場で働くスタッフは、第三者評価に必要な非常に多くの取り組みを、日々の業務と並行して実施するため大変な苦労があります。

第三者評価の準備期間は1〜3ヶ月などの短いスパンでは間違いなく不可能です。従業員全員で協力して1年くらいかけて準備したほうがいいかもしれません。

さらにいうと、第三者評価を受けるにはそれだけ大きな労力がかかるので、たとえば3年後に受けるためにコツコツ準備をするなど、事前にゴールを決めて、年単位で計画し行動したほうが良いと思います。第三者評価の準備期間は長いに越したことはないでしょう。

第三者評価を受けて事業所が得る恩恵

第三者評価を受けるメリットは質の向上です。実地指導で使われる自主点検表は、あくまでも事業所が法律に基づき税金を正しく使えているかを判断するための項目が書かれています。

第三者評価のためのガイドラインには、よりよいサービスに必要な情報が記載されているためそもそもの目的が異なります。

また、第三者評価は一度受けたら二度と受けなくていいというものではありません。

障害福祉サービスのガイドラインは定期的に改定されるため、たとえば5年前に第三者評価で受けた評価と、現在のガイドラインの内容が違っていたら、新しく受け直したほうがいいでしょう。

第三者評価ガイドラインで支援の質をアップさせる

ほとんどの事業所が受けていないことを鑑みると、現時点では第三者評価はあまり必要ないのではないかというのが率直な感想です。

現段階で第三者評価を実際に受ける必要性は低いのですが、第三者評価ガイドラインを参考にするのは非常に有益です。その理由のひとつが「質の高い支援とは何か」が具体的にわかることです。

第三者評価ガイドラインには事業所に求められている質が書いてある

仕事をしていると「事業所の質を高める」という言葉を頻繁に聞くと思います。ですが、質とは具体的に何なのかを提示できる人は少ない印象です。

なぜなら、「質」という言葉はとても抽象的で漠然としているからです。人によって質に対する考えかたや重きを置くポイントが異なっているといっても過言ではないかもしれません。

第三者評価ガイドラインは、具体的な質とは何かという問いに対してのひとつの答えです。

どのような取り組みをすると外部から質が高いと評価されるのかが明確になっているので、質の具体例が書かれていると言い換えることもできます。

第三者評価ガイドラインは、事業所を質の良い支援へと導く教科書のような役割を担っているのです。

第三者評価ガイドラインで事業所のウィークポイントを改善できる

第三者評価ガイドラインに書いてある内容を体現すると高い評価を得られるとわかっているのであれば、事業所が進むべき方向性が定まります。

第三者評価ガイドラインは誰でも閲覧できるため、実際には第三者評価を受けなくても、ガイドラインを読んで、自分たちの事業所が改善したほうがいい部分を参考にするのは自由です。

第三者評価ガイドラインは全部で105ページにも及ぶため、すべてを改善するのは大変な労力が必要です。

ですが、たとえば事業所のマニュアルを作り直したり、支援の仕方を変えたりと、自分たちの事業所のウィークポイントだけをピンポイントで改善することは可能です。

全体ではなく、評価項目の一部を抜粋して活用するくらいであればそれほど労力はかからないでしょう。また、a評価の項目は継続しつつ、それ以外の項目に重点をあてて次回にそなえるという考え方も有効だと思います。

第三者評価ガイドラインを参考にして事業所の支援の質を高めていくのはとても有意義な活用法だと思います。

第三者評価ガイドラインには現時点では必ずしも取り組む必要はない、しかし事業所の質を高めるための取り組みが書かれています。事業所の方向性に迷ったときにとても参考になるツールだと思います。

おわりに

第三者評価は現時点で実施する必要性は低く、実際に受けるとなると金銭的にも人的コスト的にも大変な覚悟を要するでしょう。

ただ、実地指導に必要な書類や指定申請書などの公的な文書には、第三者評価を受けているかどうかを記入する箇所があり、行政側の意図を少し感じます。

それを踏まえると、行政は第三者評価を受けることで、今後何かしらの施策を検討しているかもしれず、いずれ受けないといけない時期がくるかもしれません。

どちらにせよ、第三者評価を受けることや第三者評価ガイドラインを参考にすることは非常に有益です。

現段階では受けるかどうかは経営者の判断ではあるものの、第三者評価ガイドラインを読み込み現場が困っている箇所を集中的に改善し、それを一つずつ積み上げていくことは、質の高い事業所への成長につながるでしょう。

※はたらくBASEでは、記事公開した時点での法律や制度に則って記事を執筆しております。新しく事業所を開業する場合や、加算などを検討する場合は、最新の法律や、地域の障害福祉サービスを所管する窓口に制度や条件等をご確認ください。

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