就労継続支援を始める

就労継続支援事業所が放課後等デイサービスを開所するメリットを解説

放課後等デイサービスのニーズ増加に伴い、就労継続支援事業所が新たに放デイを開設するケースが増えています。しかし両方を運営する形態は一筋縄ではいかず失敗する場合もありえます。この記事でメリット・デメリットを知り、事業参入に役立てましょう。

就労継続支援と放課後等デイサービスの併設に関する誤解

放課後等デイサービス卒業後に直接、就労継続支援へは移行できない

就労継続支援と放課後等デイサービス(以下:「放デイ」と表記)に関する誤解に、放デイを卒業後はエスカレーター式に同法人内の就労継続支援に移行できるという勘違いがあります。

就労継続支援と放デイの両方を運営しているからといって、放デイを卒業したあと直接、就労継続支援を利用するわけではないのです。

たとえばB型事業所であれば、利用するためには大きく2つのルールがあります。ひとつは利用者が一般就労に向けての取り組みをしたのかどうか。もうひとつは就労移行支援事業所でB型が本当に妥当か判定してもらうことです。

放デイを卒業してすぐB型に行くことを「直B」と呼びます。みなさんご存じのように一般就労に向けての取り組みがないままB型に行こうとしても、行政は許可を出しません。

就労継続支援を経営している組織が放デイを運営しても放デイを卒業したあと就労継続支援に行くルートは当たり前ではない。新たに放デイの開設を考えているかたはまずこのポイントを押さえる必要があります。

就労継続支援事業所が放課後等デイサービスを新たに開設するメリット

今述べた前提を踏まえたうえで、ここからは就労継続支援を運営している組織が放デイを開設する利点をお伝えします。

運営面のメリット

1.就労継続支援事業所での作業を放デイ利用者に提供できるメリット
就労継続支援を運営している事業所が新たに放デイを開設する運営上のメリットは、放デイ利用者に就労体験を提供できることです。

放デイのみを運営している場合、放デイの利用者に就労に近い体験をさせようと一般の事業所に職業体験の依頼をしても簡単には上手くいかないと思います。「どんなサポートをしていいかわからない」と感じる会社もあるでしょう。

しかし就労継続支援事業所が放デイも運営していれば「〇〇という特性のある放デイ利用者が来るから□□の仕事が適しているかもしれない」という議論がスムーズにできます。

就労継続支援事業所を経営していると就労系の作業があるため、時期にとらわれず放デイの利用者に体験してもらえます。

放デイに在籍しながら、就労継続支援事業所で就労に近い現場を体験できるのは大きな経験です。就労を強く意識している事業所であれば、一般企業に求められるスキルを放デイにフィードバックする環境づくりができます。

また、一般就労に必要な知識や経験がはっきりしていると利用者に対する支援の方針や内容がより具体的になります。

放デイで就労を目指して頑張っている利用者が躓いている部分を就労継続支援が共有して、どのようなプログラムで就労に必要なスキルを身につける訓練をするのかアドバイスができるので、それが事業所全体のノウハウの蓄積になります。

就労継続支援と放デイの両方を運営するとお互いのノウハウを気兼ねなく使えます。それが同グループ内で運営をする強みでしょう。

さらに放デイ卒業後に一般就労へ移行している実績があれば、放デイだけでなく就労継続支援事業所を経営する組織全体の信頼にもつながります。

2.卒業後の進路情報を提供できるメリット
放デイは基本的に18歳を超えると利用できないきまりがあるため、卒業後の進路を選ぶ必要があります。

利用者も保護者もたくさんの可能性の中から進路を探すため色々な場所に相談に行くと思います。その負担は非常に大きいでしょう。

ですが既に就労継続支援事業を運営している事業所であれば自分たちが運営している事業についてはしっかり説明ができます。

もし複数の事業を持っているのであれば、その事業の特性や方向性、内容についての情報は蓄積されるため、利用者にとっては色々な相談ができる窓口が一本化されます。

利用者と家族はいちから卒業後の進路を調べなくとも情報を得られるため、大きな価値になると思います。

放デイに参入するときはデメリットを把握し慎重な開設を

安易な参入にならないためには金銭面の確保が重要

就労継続支援B型に勤めている、いち職員としての実感をお伝えすると、就労継続支援事業は常に定員割れの課題があるため経営が難しいと思います。

放デイへの参入を検討するときは、大前提として就労継続支援事業が安定している必要があります。

本体事業である就労継続支援がうまく行っていないなかで新しく放デイを立ち上げるのは博打に近いでしょう。

放デイが全般的にニーズがあり収益が見込めても、新規事業の立ち上げ後は一定期間、収益が上がらずマイナスになる時期があります。

すでに安定した収益のある事業がベースにありつつ、新しく放デイを展開していくのであれば、収益が上がらない時期を支えるだけの体力が事業所にあるかどうかが大きなポイントです。

福祉事業は税金を使って事業を運営し収益を上げる制度ビジネスですが、無尽蔵にお金が入ってくるわけではありません。

安定した収益や体力があるかどうかは非常に大きいでしょう。また、大きな母体があるとそれだけ参入しやすいのは事実です。

デメリットを把握する

就労継続支援事業所が放デイの運営も始めるさいに課題となるのは収益面だけではありません。現場で働く職員の大変さもあります。

障害者(就労継続支援利用者)と障害児(放デイ利用者)の支援は全く異なるというくらい内容が違います。

障害者への支援は一般企業に求められるスキルを身につけるための訓練の側面があるためある程度の厳しさが必要となります。

大変な反面、一般就労に向けての支援という方向性が定まっていると職員も利用者も目的に向かってブレずに前進できると思います。

一方で障害児は心身ともに成長過程にあり、発達段階に応じてこれから身に付けていくべき能力もたくさんあります。そのため障害児の支援は職員にとってはうまく行かないことが多い印象です。

また、福祉に限らず子どもと接する仕事は全般的に大変です。放デイの定員である10名の子どもだけではなく保護者のフォローも必要であり、目に見えない苦労がたくさんあるでしょう。

就労継続支援と放デイでは必要な人員基準も異なります。B型事業所の生活支援員や職業指導員に資格は要りませんが、放デイの児童指導員には教員免許や精神保健福祉士などの免許が必要です。

B型事業所と異なり要件を満たしていなければ働けないので、事業所間(B型と放デイ)の異動は厳しくなるため、同じ福祉サービスではあっても、違う業務として考えないといけないかもしれません。

同法人内の就労継続支援事業所はあくまで放デイ卒業後の選択肢の一つ

先ほど述べたとおり、放デイを卒業後に同法人内の就労継続支援へ移行する取り決めは禁止です。

その意味で就労継続支援事業所が新たに放デイを開設するメリットは、実際のところあまり多くはないのかもしれません。

放デイ卒業後に運営している就労継続支援事業所の利用があるとすれば、一般就労に向けて取り組んだ結果うまく行かなかったかたを受け入れる場合でしょう。

もしくは放デイで一般就労を目標に色々な訓練を積んだのちに、もう少し自信をつけたいという思いがあるのであれば可能かもしれません。

あくまでも選択肢のひとつとして、就労継続支援の魅力を伝えたうえで放デイを利用していたかたが入りたいという意思を示した場合は、先ほど述べたルールに則り就労継続支援事業所を利用してもらってもいいとは思います。

放デイ卒業後に直接、就労継続支援に行くことを強制はできませんが、就労継続支援も視野に入れてもらうために放デイと協力して質の高いサービスを提供すること自体はとてもいい取り組みだと感じます。

おわりに

事業所は、放デイ利用者が卒業後に自分たちの就労継続支援事業所を利用するだろうという意識や取り決めをしてはいけません。

就労継続支援事業が支援や実績を活用し、利用していただく児童や保護者に将来の選択に有益な効果をもたらすことができるだろうという意思や目的がはっきりしているのであれば放デイを始める意味やメリットはあると思います。

本来の事業が安定していないのに放デイが流行っているからといって参入してしまうと、収益にしか執着していない事業所ともとらえられます。

運営面でも就労継続支援と放デイは成人と児童という別の分野だと理解し、両方を運営する形態は一筋縄ではないと知るなど、正しい情報の把握が必須です。

就労継続支援事業を運営している事業所は記事内のメリット・デメリットを理解し、放デイ参入時にお役立てください。

※はたらくBASEでは、記事公開した時点での法律や制度に則って記事を執筆しております。新しく事業所を開業する場合や、加算などを検討する場合は、最新の法律や、地域の障害福祉サービスを所管する窓口に制度や条件等をご確認ください。

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