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自立訓練とは? 機能訓練・生活訓練・宿泊型自立訓練の違いを解説

自立した日常生活ができるようサポートする自立訓練。今回は2018年の規則改正により障害の区別なく利用可能になった3つの訓練タイプの概要、規則は改正されたもののタイプによっていまだに大きく異なる利用者の障害種別など、支援の全体像を解説します。

自立訓練の基本

日常生活や社会生活を自立して営めるようになるため身体機能や生活能力の向上をサポートする自立訓練は、以前は機能訓練は身体障害者のみ利用可能、生活訓練は精神障害者と知的障害者だけ利用が可能というように、障害種別によって対象者が制限されていました。

しかし規則が改正され、平成30年4月から障害種別にかかわらず自立訓練のなかのどのサービスも利用可能となりました。

自立訓練とは

そもそも自立訓練とは、障害福祉サービス事業所や障害者支援施設を利用している障害者が自立した日常生活を送れるよう支援する制度です。

具体的には理学療法・作業療法などのリハビリテーションを実施したり、事業所内での支援だけでなく自宅を訪問し食事や排泄など自立した生活ができるようサポートしたりします。

自立訓練は「機能訓練」「生活訓練」「宿泊型自立訓練」にわかれていて、それぞれ役割や重点を置くポイントが少し異なります。

機能訓練、生活訓練、宿泊型自立訓練の違い

1.機能訓練
機能訓練は主に身体機能の維持や改善が目的です。そのため理学療法士(PT)や作業療法士(OT)などによる、身体的なリハビリテーションや機能向上のための支援を実施します。

【主な支援内容】
・寝返り、起き上がりなど
・食事、排泄、整容(身だしなみを整えること)
・室内や屋外での歩行、車椅子での訓練

2.生活訓練
一方で生活訓練は主に生活能力の維持や向上が目的です。食事や入浴、排泄などの日常生活動作を改善し、自立した日常生活ができるようサポートします。

【主な支援内容】
・お金の使いかた、金銭管理
・食事、料理、洗濯、排泄など
・ストレス対処、コントロール法
・ソーシャルスキルトレーニング(SST)
・挨拶などのマナーや礼儀

3.宿泊型自立訓練
宿泊型自立訓練は、日中は一般就労で働いているかたや障害福祉サービスを利用しているかたに居住(宿泊)施設を提供し、帰宅後に家事などの日常生活のスキルを身につける訓練をすることで地域生活への移行を目的とした支援です。

【主な支援内容】
・食事、着替え、整容
・生活に関する助言
・家事など自立した日常生活を送るための訓練

支援の対象者やサービス内容、利用期間、加算の違い

「機能訓練」「生活訓練」「宿泊型自立訓練」の対象者やサービス内容、利用期間などの違いは以下の通りです。

機能訓練 生活訓練 宿泊型自立訓練
対象者 地域生活を営むうえで身体・生活能力の向上が必要な者 地域生活を営むうえで日常生活の維持や向上が必要な者 自立訓練対象者のうち、地域生活への移行を目的としている者
標準利用期間 1年6ヶ月(脊髄損傷による四肢麻痺等の場合は3年) 2年(長期入院・入所していたかたは3年) 2年(長期入院者等の場合は3年)
サービス内容 運動機能や日常生活動作の向上、リハビリテーション 日常生活を送るために必要な訓練 居住施設を提供し、家事等の日常生活スキルの訓練
主な加算 ①リハビリテーション加算
②就労移行支援体制加算
①個別計画訓練支援加算
②就労移行支援体制加算
①夜間支援体制加算
②精神障害者地域移行特別加算
③強度行動障害者地域移行特別加算

人員配置の違い

自立訓練は各サービスによって施設に必要な人員配置も異なります。

1.機能訓練

主な人員配置 ①サービス管理責任者
②看護職員
③理学療法士又は作業療法士
④生活支援員
60:1以上(1人は常勤)
1人以上(1人は常勤)
1人以上1人以上(1人は常勤)※②〜④は6:1以上

2.生活訓練

主な人員配置 ①サービス管理責任者
②生活支援員
60:1以上(1人は常勤)
6:1以上(1人は常勤)

3.宿泊型自立訓練

主な人員配置 ①サービス管理責任者
②生活支援員
③地域移行支援員
60:1以上(1人は常勤)
6:1以上(1人は常勤)
1人以上

自立訓練の利用料(利用者負担額)

自立訓練の利用者負担額は基本的に1割負担です。残りの9割は国と自治体が負担します。

※引用:厚生労働省 障害者の利用者負担より

障害福祉サービスの利用料は上記の通り所得に応じて4つの区分にわかれています。そのため利用料が発生するかたもいれば無料で支援を受けられるかたもいます。

どの区分であってもそれぞれ負担上限月額が決まっていて、月の利用日数にかかわらず上限金額以上を支払う必要はありません。

自立訓練の現状

自立訓練の障害種別における利用者の傾向

利用者の障害種別は、自立訓練の形態によって大きく異なります。身体障害者はほとんどの場合で機能訓練を利用していて、生活訓練や宿泊型自立訓練の利用者は数パーセント以下です。

引用:厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第14回 資料4より

平成30年から障害種別にかかわらず各サービスを利用できるようになったとはいえ、身体的リハビリテーションを目的としている機能訓練は、精神障害者や知的障害者の利用者が少ないままなのが実情です。

一方で生活訓練、宿泊型自立訓練の利用者は精神障害者が全体の約7割を占めます。知的障害者は約3割です。

自立訓練の事業所数と利用者数

令和2年度のデータによると、自立訓練の事業所数と利用者数は下図の通りあまり多くありません。

引用:厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第14回 資料4より

また国保連データによると、機能訓練、生活訓練、宿泊型自立訓練によって多少異なるものの、事業所数と利用者数は全体的に横ばいもしくは緩やかな減少傾向にあります。

機能訓練は平成24年のデータに比べ事業所数はほぼ横ばい、利用者数は微減しています。宿泊型自立訓練は事業所数と利用者数ともに減少していて、特に利用者数は1000人近く減っています。

生活訓練だけは事業所数は横ばい、利用者数は平成28年から微増しています。

おわりに

今回は自立訓練の種類や支援内容、利用期間、データに基づいた自立支援の現状などを解説しました。

事業所数や利用者数はほかの障害福祉サービスに比べ決して多いとはいえませんが、身体機能を高めたり地域生活への移行を果たしたりするうえでとても重要なサービスです。

この記事で自立訓練の制度や役割の違いへの理解を深め、身体機能回復を目的としているかたを主な対象とするのか、地域移行を希望しているかたを対象にするかなど、事業を開設するさいにお役立てください。

※はたらくBASEでは、記事公開した時点での法律や制度に則って記事を執筆しております。新しく事業所を開業する場合や、加算などを検討する場合は、最新の法律や、地域の障害福祉サービスを所管する窓口に制度や条件等をご確認ください。

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