就労継続支援を知る

障害者の仲間にもロールモデルにもなれる仕事「ピアサポート」

ピアサポートとは、自らの障害経験を活かし他の障害者をサポートする仕事です。体験や感情を共有しやすいため専門家だけでは気づきにくい部分のカバーが期待されています。今回は雇用に興味がある事業所向けに、業務内容や導入の効果など全体像を解説します。

ピアサポートと仕事内容

ピアサポート(ピアスタッフ・ピアサポーター)とは

ピアサポートとは、自身も障害があるかたや以前に障害を抱えていた経験のあるかたが、当事者としての経験を活かしてほかの障害者の支援を担う仕事です。

ピアには「仲間・対等者」という意味があります。障害を持つかたと同じ感情や体験を共有しやすい傾向があるため、専門家だけでは理解しにくい部分をカバーしたり、障害者と近い視点で支援をサポートできたりします。

ピアサポートとして働くかたは「ピアスタッフ」や「ピアサポーター」と呼ばれることもあります。

ピアサポートの役割

ピアサポートは身体障害・精神障害・知的障害の障害種別に関わらず徐々に活躍の場が広がっています。

(画像:厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第19回 資料3より抜粋)

上記はピアサポートの業務の一例です。そのなかでも主に利用者への相談や助言がピアスタッフの仕事です。

特性を持っていたり過去に障害を抱えていたりするピアスタッフは、ほかの職員だと見落としてしまうかもしれない部分のアドバイスや同じ経験を経たからこその共感、助言が期待されています。

ピアサポートのメリット・デメリット

ピアサポートのメリット

ピアスタッフを雇用するメリットの一例は以下の通りです。

1.類似の体験に基づく相談や助言ができる
現在も障害を抱えている、もしくは以前に障害があった経験があり利用者の悩みと類似の悩みを経験したことがある可能性が高い。そのため自身の経験を基に利用者に寄り添った相談対応がしやすい。

2.利用者のロールモデルになれる
同じ事業所内に、自身も体調管理をしつつ職員として働くピアスタッフがいると、その施設を利用しているかたのロールモデルになりやすい。

3.ほかの職員の障害理解が高まる
職場にピアスタッフがいることで、利用者だけでなくほかの職員の特性の理解などの促進にもつながる効果が期待できる。

4.ほかのスタッフには言いにくい悩みを受信しやすい
専門家や職員には話しにくい内容でも、心理的な立場が近いピアスタッフには話してくれるケースがあり、利用者と専門家の橋渡しをしやすい。また、家族に直接言いにくい場合もピアサポーターが間に入って話を聞くことができる。

5.利用者家族の安心感につながりやすい
利用者が言語化出来ていない感情や症状をピアサポーターが代弁できる可能性があり、利用者家族の症状の理解が促進されやすい。また事業所にピアサポーターがいることで、家族も利用者の将来像のモデルケースを想像しやすい。

ピアサポートのデメリット

1.体調管理
ピアサポートは障害を抱えているかたや今も障害のあるかたが就く職業です。利用者からほかのスタッフに話しにくい重大な相談を受けることがあっても、自身の体調を保ちながら働く必要があります。

体調管理は身体障害者、もしくは医療現場で働くピアスタッフであっても大変です。精神疾患を持っている人はより一層、体調を保つための工夫が大切です。

2.ロールモデルとなるピアスタッフの数が少ない
ピアスタッフは絶対数が少ないので、どのような勤務形態や事業所内での業務内容がいいのかを模索している段階です。そのためせっかくピアスタッフになるための研修を受けても、福祉の現場ではまだまだ採用が少ないというデメリットがあります。

3.加算額が十分ではない
令和3年の報酬改定で、就労継続支援B型にピアサポート実施加算が新設されました。

≪ピアサポート実施加算【新設】≫ 100単位/月
「利用者の就労や生産活動等への参加等」をもって一律に評価する報酬体系において、各利用者に対し、一定の支援体制(※)のもと、就労や生産活動等への参加等に係るピアサポートを実施した場合に、当該支援を受けた利用者の数に応じ、各月単位で所定単位数を加算する。
※地域生活支援事業として行われる「障害者ピアサポート研修(基礎研修 及び専門研修)」を修了した障害者(障害者であったと都道府県、指定都市又は中核市が認める者を含む。)と管理者等を配置し、これらの者により各事業所の従業員に対し、障害者に対する配慮等に関する研修が年1回以上行われていること。
*令和6年3月31日までの間は、都道府県、指定都市又は中核市が上記研修に準ずると認める研修でも可とするなどの経過措置を設ける。

(画像:厚生労働省「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」より抜粋)

しかし、加算は月に100単位とあまり多くはありません。ピアサポーターに毎日来てもらうと、事業所は収入よりも支出が多くなってしまいます。そのため、毎日ではなく週に1回など働ける日数が少ないかもしれません。

ピアスタッフとして働くときの注意点

利用者同士の板挟みにならないように気をつける

ピアサポーターは利用者の悩みに共感しやすいというメリットがあるからこそ、家族やほかの職員に話せない悩みなどセンシティブな相談を受ける場面もあります。

ときには利用者同士のトラブルの相談を受けるケースもあります。体調管理はもちろんのこと、ほかの職員との情報共有が必須です。

スタッフとしての立場とピア(仲間)としての立場のバランスを取る

また、ピアスタッフは職員であると同時に障害を抱えた当事者でもあります。障害があるという点では利用者と同じですが、給料には差が生まれます。

そのため、職員として利用者に接する部分と、仲間として利用者と関わるバランスがとても大切です。

おわりに

ピアサポートは当事者の強みを活かせる仕事です。障害を克服したりうまく付き合ったりしている経験があるので、利用者と対等の目線に立った相談や助言が期待されます。

体調管理や加算額などの課題は抱えていますが、記事でご紹介したとおりたくさんのメリットもあります。ピアサポーターを採用するとき事業所側にサポート体制があれば、ピアサポートの導入は事業所や利用者、ピアサポーターにとって良い循環をもたらしてくれるかもしれません。

障害福祉サービスにおけるピアサポートの制度や実情、導入のポイントについて詳しく知りたいかたは「就労継続支援の加算? 支援体制の将来図からはじめよう(後編) – はたらくBASE」をご覧ください。

※はたらくBASEでは、記事公開した時点での法律や制度に則って記事を執筆しております。新しく事業所を開業する場合や、加算などを検討する場合は、最新の法律や、地域の障害福祉サービスを所管する窓口に制度や条件等をご確認ください。

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