生活介護とは障害者支援施設などで常に介護が必要な方への介護や家事、相談・助言を担うサービスです。
ニーズが高まっている反面、重症の方の受入れが3割を切るなど課題もあります。
制度内容や生活介護事業立ち上げまでの流れをわかりやすくご紹介します。
生活介護とは
主に昼間において、入浴・排せつ・食事等の介護、調理・洗濯・掃除等の家事、生活等に関する相談・助言、その他の必要な日常生活上の支援、創作的活動・生産活動の機会の提供、身体機能や生活能力の向上のために必要な援助を行うサービスです。
このサービスでは、自立の促進、生活の改善、身体機能の維持向上を目的として通所により様々なサービスを提供し、障害のある方の社会参加と福祉の増進を支援します。
利用対象者
生活介護のサービスを利用する対象者は年齢や施設の入所の有無によって異なります。対象となる人の障害支援区分(支援を必要とする度合い)は、50歳を区切りに以下のように定められています。
[通常]
- 50歳未満の場合:障害支援区分3以上の方。
障害者支援事業所などに入所する場合は、障害支援区分4以上の方。 - 50歳以上の場合:障害支援区分2以上の方。
障害者支援事業所などに入所する場合は、障害支援区分3以上の方。
[生活介護と施設入所支援との利用を組み合わせる方]
50歳未満の場合:障害支援区分が4以下の方
50歳以上の場合:障害支援区分が3以下の方
※併用の場合、指定特定相談支援事業者によるサービス等利用計画案を作成する手続きを経た上で、市町村により利用の組合わせの必要性が認められた方が対象。
対象者の中には特に介護が必要な重症心身障害者も含まれますが、重症心身障害者の受け入れは厳しい状況にあります。その理由として、医療的ケアや設備等の面で費用がかかることや重症心身障害者に対応できる専門性を持った職員の不足が挙げられます。
厚生労働省の調査によると、生活指導員・看護職員の※常勤換算数と事業所の重症心身障害者の平均受け入れ件数は比例しています。重症心身障害者に関する専門性が高い職員の常勤換算数が増えれば受け入れ件数も増やせるということです。
※常勤換算とは・・・全従業員を対象に、常勤・非常勤(パート・アルバイトを含む)などの雇用形態に関わらず労働時間で計算を行い、「常勤に換算した場合に何人働いているか」を換算した人数のことです。
サービス提供内容
生活介護のサービス提供内容は以下の通りです。
- 入浴、排泄および食事等の身体介助
- 調理、洗濯および掃除等の家事支援
- 生活等に関する相談及び助言
- その他の必要な日常生活上の支援
- 創作的活動または生産活動の機会の提供
- その他の身体機能または生活能力向上のために必要な援助
介助だけでなく、生活に関する相談や生産活動の機会提供も含まれています。
生活介護事業について
生活介護事業の収益構造
生活介護は、介護保険制度適用のサービスであり、その収益構造は一般事業と大きく異なっています。介護保険制度によって定められたサービスごとの「介護報酬」が主な収入源となり、その内訳は、9割は国費、1割は利用者負担によってまかなわれます。
近年、重度心身障害者のケアに対する報酬の見直しが実施されており、対象となる事業所では増収となっているケースも見受けられます。
生活介護事業参入のメリット・デメリット
メリット
・介護保険制度適用サービスで、9割は国費から支払われるため、事業の安定性がある。
デメリット
・事業の収益が国に依存しているので、国の法改正などに左右される。
生活介護事業立ち上げまでの流れ
ここからは生活介護事業所立ち上げまでの流れを解説します。はじめに指定申請の流れを説明したあと、生活介護事業立ち上げ時に満たす必要のある指定基準を詳しくお伝えします。
指定申請までの流れ
指定申請の流れは以下の通りです。
- 事前協議
事前協議は各都道府県の自治体の管轄課で受け付けています。不明な点は問い合わせてみてください。 - 申請書類の提出
申請するサービスの種類に応じて必要な書類を準備してください。
申請書類等は正副2部作成し、正本は市に提出、副本は事業所で保管する必要があります。 - 書類の受理・審査
申請書受理後に、定められた人員や設備、運営の基準を満たしているかの具体的な審査を行います。必要に応じて実地確認が行われます。不備があった場合、再度提出となります。 - 指定後、通知
指定標準期間は約1ヶ月程度ですが、都道府県によっては申請日や標準期間が異なる場合があります。指定された事業者は事業所番号を付番した「指定通知書」が送付されます。原則として、通知書の再発行はありませんので、大切に保管してください。
指定基準
生活介護事業を立ち上げるには以下の基準を満たす必要があります。
- 法人格の取得
- 人員基準(事業所に必要な人員及び配置の基準)
・管理者:1名以上(業務に支障が出なければ、他業務と兼務可)
・サービス管理責任者:1名以上の常勤者
利用者と職員数の比率は60:1
・医師:1名以上 (嘱託可)
・看護職員:1名以上
・生活支援員:1名以上の常勤者
・理学療法士または作業療法士:必要な場合は配置
※生活支援員、理学療法士または作業療法士、看護職員の総数は、常勤換算で規定
・平均障害支援区分が4未満
6:1(利用者:職員数)
・平均障害支援区分が4以上5未満
5:1(利用者:職員数)
・平均障害支援区分が5以上
3:1(利用者:職員数)
- 設備基準(事業所の設備に関する基準)
・最低定員20名
・訓練、作業室の設置
・相談室の設置
・洗面所・便所の設置
・多目的室の設置 - 運営基準(サービスの提供及び運営に関する基準)
障害者自立支援法に基づく障害福祉サービス事業の設備及び運営に関する基準により以下の規定を満たす必要があります。・事業の目的及び運営の方針
・職員の職種、員数及び職務の内容
・営業日及び営業時間
・利用定員
・就労継続支援B型の内容並びに利用者から受領する費用の種類及びその額
・通常の事業の実施地域
・サービスの利用に当たっての留意事項
・緊急時等における対応方法
・非常災害対策
・事業の主たる対象とする障害の種類を定めた場合には当該障害の種類
・虐待の防止のための措置に関する事項
・その他運営に関する重要事項
指定基準は自治体によって詳細が異なります。詳しくは自治体のホームページまたは、管轄課の窓口にお問い合わせください。
おわりに
今回は生活介護の概要と事業立ち上げまでの流れについて解説してきました。生活介護において、重症心身障害者の受け入れはまだまだ少ないのが実情ですが、需要は高まっています。
この記事を参考に、生活介護の事業立ち上げや重症心身障害者の受け入れなどにお役立てください。