就労継続支援を始める

就労継続支援を開設するならA型?B型? ケースバイケースで仕組みを選ぼう

就労継続支援の開設を考えたときに迷うのがA型とB型のどちらにするのかです。この記事では一般企業からの参入や単体事業所の開設、グループホームなどとの複合型施設の場合など、ケースごとに変わるA型・B型事業所のメリット・デメリットを解説します。

※就労継続支援A型・B型の内容や開設の流れを知りたいかたはこちらをご覧ください。
「就労継続支援A型」とは?内容から開設の流れをわかりやすく解説 | はたらくBASE
「就労継続支援B型」とは?制度の仕組みから開設の流れまで解説 | はたらくBASE

全体的に開設のメリットが大きい就労継続支援B型

就労継続支援B型は新規参入しやすい

就労継続支援B型(※以降、B型と表記)は就労継続支援A型(※以降、A型と表記)に比べ全国的に数が多く、令和2年度のデータではA型が約4000であるのに対し、B型は13000以上です。

事業所数はB型が圧倒的に多く、新しく事業所を開設する場合に参入しやすいのもB型でしょう。

A型は利用者への工賃を訓練等給付費からではなく事業収益から支払う義務があります。過去に訓練等給付費から利用者への工賃の支払いが横行したため、A型は事業収益から給料を支払うよう省令が改正されました。

したがってA型は事業収益がないと利用者に工賃を支払えず、また、生産活動からどのように利用者に工賃を支払えるだけの収益を得るのかを具体的に記した事業計画を自治体に提出しないといけません。

しかしB型の事業計画はあくまでも目標です。事業計画の中身もA型開設ほどの詳細さは必要でないため、B型のほうが参入しやすいのです。

就労継続支援B型は支出を抑えられる

また、A型とB型では利用者への工賃の額も異なります。

B型の平均工賃は約16000円です。定員が20人だと利用者への支払額は毎月30万円ほどです。一方でA型は最低賃金以上を払う必要があります。仮に利用者が月に8万円ほど稼げるような働きかたをするとそのぶんの支出だけで月に160万円くらいかかります。

企業からの下請けなど継続的な収入が見込めるケース

事業所を開設するさい、収益が見込める場合でもB型からスタートするほうがスムーズでしょう。

段階的に考えるのであれば参入しやすいB型を開設し、A型並の収益を達成できた時点でA型に切り替えてもいいと思います。

A型をB型にすると反発があると思いますが、B型からA型への変更であれば利用者や外部からのイメージは良いと思います。

なぜなら利用者にとってはB型よりもA型で働いているほうがステータスを感じる場合が少なくないからです。

ただし、事業所にメリットがあるかというとそうでもありません。A型のほうが集客率は上がるものの、事業収益から利用者への工賃の支払い義務があるA型のほうが生産活動の維持は難しいと思います。

A型並の収益があるのであればB型のままでいたほうが断然、利益は出るでしょう。B型でA型並の工賃を払ってはいけないというルールはないため、「A型並に払えるB型です」という打ち出しかたもできそうです。

事業所側にA型に移行するメリットはあまりありませんが、それでもA型に変更する場合は経営上の利点よりも経営者がどのような事業所にしたいのかという「想い」の要素が強いと思います。

一般企業からの参入に適した就労継続支援A型事業所

就労継続支援への参入時にいきなりA型を開設するのはハードルが高いケースが多いのですが、一般企業の場合はそうでもありません。

それは一般企業が「この部署は福祉サービスを運営したほうが収益が上がる」と判断した場合です。一般企業がいち部署を健常者ではなく障害特性を持った方々に一括でお願いをする、その部署を福祉事業所として独立させ参入する方法です。

A型を開設しても元々収益性のある生産活動があり利用者も確保できるのであればメリットはあるでしょう。

また、利用者はB型よりもA型のほうが工賃が高いとわかっているので、A型で働きたいという希望はとても強いと思います。そのためA型を開設すると利用者はすぐ集まるでしょうし、既に継続的な収益があれば事業も安定します。

就労継続支援A型は就労継続支援B型より負荷の高い仕事に適している

一般企業がA型を開設してこれまでの仕事を利用者に担ってもらうとなると、ある程度ハードな作業内容になると思います。一般企業が元々取り組んでいたノルマがある事業は、A型であればスライドしやすいかもしれません。

しかしB型は事業形態として「きつかったら休んでもいい」という側面があるので、納期やゴールが決まっている仕事を担うには能力的な部分も含めて進めにくい場合もあるでしょう。一般企業が求める作業に付いていけないかたもいるかもしれません。

母体となる企業や生産活動を持たない事業所はB型のほうがメリットが大きいのは事実ですが、既に継続的な生産活動を持っている一般企業が、ひとつの部署を福祉サービスとして立ち上げる場合はA型が適しているでしょう。

就労継続支援A型での働きかたは利用者にとってのひとつのゴール

また、A型や一般就労に対して利用者が持つイメージも、一般企業がA型を開設する利点につながるかもしれません。

実は、一般就労ではなくA型がゴールだと感じている利用者は少なくありません。

本来はA型で自信をつけて一般就労を目指すのでしょうが、正社員でもなければ一般就労とA型の給料(工賃)はほとんど変わらないと思いますし、実際にA型と一般就労で働くことはあまり変わらないと認識している利用者が多い印象を受けます。

さらに、A型はサービス管理責任者や支援員の配慮を受けられるため、一般就労より間違いなく支援が手厚く、A型から一般就労に移行することは利用者にとってとても勇気がいるでしょう。

B型より工賃が高くブランド力もあるA型を目指し、A型で働き始めたあとは、あまりメリットを感じられない一般就労への移行をせずに、A型をひとつのゴールとして頑張るのは利用者心理として自然な流れなのかもしれません。

障害特性で就労継続支援の運営は変わる

就労継続支援を運営するにあたって、障害特性によっての作業の向き不向き自体はあります。

たとえばA型は工賃を払うために利用者に求める生産力をある程度確保しないといけないので、身体障害を持ったかたが身体を動かす作業を担うのは難しいと思います。

身体を動かす作業がメインとなるのであれば、精神障害や知的障害のかたのほうがうまくいくかもしれません。

反対に、A型でパソコンを使った作業をしているケースでは身体に障害はあっても知的レベルが高いかたが活躍しそうです。

とはいえ、「パソコン作業がメインだから身体障害のかたを中心にしよう」という単純な話ではありません。どのような事業をしたいのか、どのようなかたに利用者として来てもらいたいのかという企業の理念に大きく左右されるでしょう。

セオリーを踏まえたうえでどのような就労継続支援にしたいか

工賃が高いA型のほうが利用者は集めやすく、B型は始めやすいものの競争相手が多いため利用者の確保が難しいという傾向や、単体の小さな企業の場合はB型を、一般企業が参入する場合はA型が適しているなどのセオリーはあります。

しかしそれらを踏まえたうえで、最終的には事業を立ち上げるにあたって経営者が思い描く、どのような事業所を作りたいのかという「想い」によってA型なのかB型なのかがわかれるのだと思います。

したがって、どういうかたが開設するかにもよるでしょう。事業所開設を考えている人が、身近で関わっているかたたちの働ける場所が欲しいと思っているのであれば仕事場に加え生きがいづくりの提供の側面もあるB型かもしれません。

おわりに

就労継続支援をA型にするのかB型にするのかは、どういう状況で立ち上げるかが大事なポイントです。

本当にゼロから参入するのであれば、いきなりA型を立ち上げるのではなくB型から始めてA型への移行もしくはA型並の工賃を達成するB型を目指すでしょう。また、既に安定した収益のある一般企業の場合はA型が適しているかもしれません。

最終的にはどのような事業所にしたいのかという「想い」の要素は強くありますが、想いという漠然としたものを実現するためにA型・B型に適したケースやメリット・デメリットを学び、そのうえで判断することが事業所開設を成功するために必要でしょう。

※はたらくBASEでは、記事公開した時点での法律や制度に則って記事を執筆しております。新しく事業所を開業する場合や、加算などを検討する場合は、最新の法律や、地域の障害福祉サービスを所管する窓口に制度や条件等をご確認ください。

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