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支援者向け!適切な支援に必要な身体障害の基本知識

身体障害は人それぞれの程度があり、視覚障害や聴覚障害、心臓機能障害など支援者側がしっかり理解できていないと、適切な支援ができず利用者離れにもつながります。この記事を読んで身体障害の基本知識を学び、合理的配慮に沿った快適な職場環境が作れます。

身体障害者とは

(1)身体障害・身体障害者の概要

身体障害とは後天的な理由で、両手両足に不自由があったり、視覚、聴覚に問題があったりするなど、身体上に何らかの障害がある状態のことです。

身体障害者は、身体障害者福祉法に基づいて「身体障害者手帳」の交付を受ける必要があります。 交付後、障害者総合支援法等による各種福祉サービスを受けることができます。

(2)身体障害の種類

身体障害者手帳の交付対象となる障害の範囲は、身体障害者福祉法別表によって定められています。分類は以下の通りです。

  1. 視覚障害
    視力や視野に障害があり、生活に支障が出る状態です。また、眼鏡をつけても一定以上の視力が出ないことや、視野が狭くなり人や物にぶつかることもあります。
  2. 聴覚又は平衡機能の障害
    身の回りの音や話し言葉が聞こえにくい状態です。
    平衡機能障害とは、耳や脳の機能の障害により、姿勢を調節する機能である「平衡機能」がうまく働かず、起立や歩行に不自由のある状態をいいます。
  3. 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
    発音にかかわる器官である口腔や鼻腔といった構音器官などの障害により、音声による意思疎通が難しい状態のことです。
  4. 肢体不自由
    両手と両足や胴体の部分に障害があり、日常生活での動作に困難がある状態です。
  5. 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害その他政令で定める障害
    体の内部の臓器に障害がある状態です。身体障害者福祉法は、以下の7つの障害を内部障害と定めています。

・心臓機能障害
・腎臓機能障害
・呼吸器機能障害
・ぼうこう、直腸機能障害
・小腸機能障害
・ヒト免疫不全ウィルス(HIV)による免疫機能障害
・肝臓機能障害

(3)身体障害の等級

身体障害には症状の種類や日常生活での支障の程度により「1級から7級」までの区分が設けられています。等級身体障害者手帳申請の際に審査が行われ、障害の等級が認定されます。

等級は1級に近づくほど障害の程度が重く、7級に近づくほど障害の程度が軽くなっていきます。詳しくは厚生労働省の「身体障害者障害程度等級表」をご覧ください。

障害福祉サービス事業者が利用者受け入れのためにできること

(1)合理的配慮

身体障害者だけでなく、障害を持つ利用者の方々を受け入れるには、合理的配慮が必要です。

合理的配慮とは、障害者の方が社会生活を送りやすいよう、受け入れ側が行うべき配慮のことです。配慮の内容は、障害を持つ方から提案があり、その提案に対して受け入れ側の負担が重すぎない範囲で対応します。

負担が重すぎる場合は、丁寧に理由を説明し、別の方法を提案することも含め話し合い、理解を得られるように努めることが重要です。
ここでは種類別にいくつかの例を提示します。

  1. 視覚障害
    ・「こちら」「あちら」などの指示語ではなく「30センチ右」「2歩前」というように位置関係をわかりやすく伝える
    ・資料を拡大文字や点字によって作成したり、資料の内容を読み上げて伝えたりする
  2. 聴覚又は平衡機能の障害
    ・筆談、手話、コミュニケーションボードなどの目で見てわかる方法を用いて意思疎通を行う
    ・字幕や手話などの見やすさを考慮して座席配置を決める
  3. 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
    ・言語障害により聞き取りにくい場合にわかったふりをせず、内容を確認して本人の意向に沿うようにする
  4. 肢体不自由
    ・車いす利用者のために段差に携帯スロープを渡す
    ・高い所に陳列された商品を取って渡す
  5. 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害その他政令で定める障害
    ・継続的な通院や服薬が必要なときには、休暇や休憩などについて配慮する
    ・ペースメーカーや人工呼吸器などが必要なときには、それらの機器の使用について配慮する

(2)合理的配慮を進めるには

合理的配慮を実施する過程でのポイントをご紹介します。

  1. 当該障害者からの申し出
    事業所におけるサービス提供、教育現場、雇用関係といういずれにおいても、障害者の方から合理的配慮の申し出をされることで始まります。雇用の募集や採用を行う場合、当該障害者からの合理的配慮の申し出は面接日までに時間の余裕をもっておこなわれることが求められます。
  2. 配慮内容についての話し合い
    当該障害者がどのような合理的配慮を求めているのかを把握し、事業者側がどのような対応を取れるのかを話し合います。障害者側から具体的対応が提示されない場合や事業者側にとって極めて大きな負担となる場合は、実施可能な対応の選択肢を提示し、相互が納得できる対応に至るまで話し合います。
  3. 合理的配慮の確定・実施
    当該障害者の求める合理的配慮について、事業者側に大きな負担となるため対応不可能な場合は、できない理由や根拠を示して説明し、事業者側が対応可能な選択肢を提示した上で話し合い、確定します。確定後に合理的配慮を実施します。
  4. 合理的配慮のモニタリングと評価
    継続利用するサービスや就労の場合は、合理的配慮を実施しつつ、経過を観察し、当該障害者と定期的に内容を評価し、必要な場合は変更や改善を加えながら合理的配慮を続けていきます。

(3)就労における合理的配慮

  1. 採用・応募時の合理的配慮について
    就労に関わる合理的配慮は、障害者雇用促進法によって定められています。
    採用・応募の際に求められる合理的配慮は、当人の障害の特性によりさまざまです。・募集内容について音声等でも提供する
    ・採用試験を音声や点字で実施する
    ・試験時間を延長して実施する
    ・就労支援機関の職員の同席を許可する
    ・面接時などの筆談対応
    ・移動を可能な限り少なくなるような工夫
  2. 採用後の合理的配慮について
    採用後の合理的配慮は基本的に作業・職場環境に関して求められる場合が多くあります。 原則として、どのような障害を持つ従業員に対しても以下の項目を検討する必要があります。・業務指導
    ・相談を受ける担当者を定めること
    ・通院や体調面を踏まえた出退勤時間の配慮
    ・こまめな休憩・休暇への配慮
    ・他の従業員に障害の内容や必要な配慮について周知するなどの配慮

この他にも、コミュニケーションや職務を円滑にするための工夫などの配慮が考えられます。また、福利厚生や研修においても、障害があることを理由に利用や参加できないことをなくしましょう。

必要な配慮について事前に話し合うのが、利用者にとって快適な職場環境を作ります。

おわりに

身体障害は外見に障害があることがわからない場合もあるため、理解が必要です。障害を持っている方を事業先で受け入れるにあたっては、合理的配慮を踏まえて相互に負担のない選択を行うことが重要となってきます。今回の記事を参考にぜひ検討してみてください。

※はたらくBASEでは、記事公開した時点での法律や制度に則って記事を執筆しております。新しく事業所を開業する場合や、加算などを検討する場合は、最新の法律や、地域の障害福祉サービスを所管する窓口に制度や条件等をご確認ください。

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