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社会的課題の解決をミッションとする日本の「ソーシャルビジネス」

「ソーシャルビジネス」は各国で定義が異なってきます。日本では「社会性」「事業性」「革新性」を要素に、社会的な問題を継続的に解決し支援していくことが目的となっています。融資を受けることができ、ソーシャルビジネスを始めやすくなっています。

ソーシャルビジネスとは

ソーシャルビジネスの定義

日本と海外でソーシャルビジネスの定義は異なります。
ソーシャルビジネスは、各国における国家システムや社会のあり方、歴史的背景によって違いが生まれるからです。

たとえば、アメリカでは社会問題解決を自社の資金を用いて行う非営利組織をソーシャルビジネスとして位置付けています。しかし、法整備が進んでいないため、営利団体も含んだ幅広い事業をソーシャルビジネスと定義しているようです。

一方で、法整備が進んでいるヨーロッパでは、ソーシャルビジネスは事業を行う手段の一つとされています。実態は、NPOや協同組合、非営利団体であることがほとんどです。

日本では、経済産業省のソーシャルビジネス研究会によりソーシャルビジネスの概念が公表されています。以下の3つの要素を持つものが、日本におけるソーシャルビジネスの定義でしょう。

「社会性」・・・現在、解決が求められる社会的課題に取り組むことを事業活動のミッションとすること。
「事業性」・・・ミッションをビジネスの形に表し、継続的に事業活動を進めていくこと。
「革新性」・・・新しい社会的商品・サービスや、それを提供するための仕組みを開発したり、活用したりすること。また、その活動が社会に広がることを通して、新しい社会的価値を創出すること。

ソーシャルビジネスの特徴

ソーシャルビジネスの大きな特徴は2つあります。1つ目は、事業の目的として「利益の追求」よりも「社会的課題の解決」に重きを置いている点です。2つ目は、寄付金などの外部資金だけに頼らず自社で事業収益を上げることで継続的な社会支援を可能にしている点です。

ソーシャルビジネスと一般のビジネスやボランティアとは何が違うのでしょうか。次の章でご紹介します。

①一般のビジネスとの違い

ソーシャルビジネスと一般のビジネスの一番の違いは、事業目的です。一般的なビジネスでは収益の最大化が目的ですが、ソーシャルビジネスの目的は、「社会的課題を解決すること」です。事業目的を「社会的課題の解決」と設定しているか否かで、ソーシャルビジネスと一般のビジネスは区別されます。

②NPOとの違い

次に、NPOとの違いを見てきましょう。NPOでは、利益を構成員に分配せず、団体の活動目的を達成するための費用に充てます。

収入源は主に会費、寄付金、補助金、助成金、事業収入の5つです。事業性があればNPOもソーシャルビジネスと言えますが、寄付金に依存した運営であればソーシャルビジネスとは言えないでしょう。

③ボランティアとの違い

ソーシャルビジネスとボランティアは、社会的課題解決を目的にしている点は共通していますが、「自らが収益を上げるための活動」をしているかどうかという点で異なります。

ソーシャルビジネスの場合、資金を生み出すことができる限り、社会的課題解決のために活動を続けられます。収益を生み出さないボランティアが、社会貢献活動の資金を工面するには、寄付金などの外部資金が必要であり「事業性」があるとは言えません。

④コミュニティビジネスとの違い

最後にコミュニティビジネスとの違いについてご紹介します。そもそもコミュニティビジネスとは、地域の課題を住民が主体的に、ビジネス的手法を用いて解決する取り組みのことを指します。

ソーシャルビジネスが社会的課題全般の解決を目指すのに対し、コミュニティビジネスはその中でも特に、地域的な課題に着目しています。従って、ソーシャルビジネスはコミュニティビジネスを含む概念と言えます。

⑤ソーシャルビジネスの事例

日本だけでなく、海外にも様々なソーシャルビジネスを展開している事業があります。その事例をご紹介します。

  1. LITALICO
    LITALICOは、学習塾及び幼児教室の運営事業、障害児支援事業、障害者への就労支援事業、インターネットメディア事業などのソーシャルビジネスです。LITALICOが取り組んでいる社会問題は、障害者への就労支援と教育問題です。教育問題では、従来の画一的な教育システムでは限界があると考え、それぞれの子どもに合った学習環境を提供する「LITALICOジュニア」という学習教室を運営しています。
  2. 株式会社坂ノ途中
    「100年先もつづく、農業を」というコンセプトのもと、農薬や化学肥料不使用で栽培された農産物の販売を行っている農業のソーシャルビジネスです。連携している農家は関西を中心に約200軒、そのうち9割が新規就農者という、革新的な事業を展開しています。海外でも、ウガンダや東南アジアの国々で、環境保全と現地の人々の所得確保の両立を目指すプロジェクトに取り組んでいます。
  3. マザーハウス
    マザーハウスは「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念のもと、発展途上国でアパレル製品及び雑貨を企画・生産・品質指導し、先進国で販売しています。マザーハウスが取り組んでいる社会的課題は、発展途上国の雇用拡大や貧困問題、経済自立です。マザーハウスの商品は、バングラデシュをはじめとした途上国で生産しています。収益を上げながら、現地に安定した雇用を生み出し、経済的自立を促すことで、貧困問題の解決に取り組んでいます。

ソーシャルビジネスで受けられる融資「ソーシャルビジネス支援資金」

ソーシャルビジネス支援制度

ここまで、ソーシャルビジネスは外部資金だけに頼らず継続的に収益を上げることを特徴としていると解説してきましたが、日本にはソーシャルビジネスの支援を促進する融資制度が存在します。

それが日本公庫の「ソーシャルビジネス支援資金」です。ソーシャルビジネスをこれから展開しようと考えているや既に営んでいる方が広く利用できる支援資金であり、保育サービス事業や介護サービス事業等を営む方に対しては特別利率が適用されます。

  1. 利用対象者
    ①NPO法人
    ②NPO法人以外であって、次の(1)または(2)に該当する方
    (1)保育サービス事業、介護サービス事業等を営む方
    (2)社会的課題の解決を目的とする事業を営む方
  2. 融資限度額
    7,200万円(うち運転資金4,800万円)
  3. 返済期間
    設備資金:20年以内(うち※据置期間2年以内)
    運転資金:7年以内(うち※据置期間2年以内)
    ※最初の2年以内は据置期間として元本の支払いが猶予されます。つまり、最長2年間は利息のみ支払えば良いということです。
  4. 担保・保証人
    一定の要件を満たす方は、経営者保証を不要とする融資制度をご利用いただけます。詳しくは、日本公庫にご相談ください。
    ※NPO法人の特例:利率を上乗せすることで、代表者保証が不要になります。
  5. 利率
    返済期間や担保の有無によって、異なる利率が適用されます。

申込みから融資を受けるまで

  1. 申込み
    借入申込書、企業概要書(または創業計画書)などの必要書類を提出します。
  2. 面談
    資金の使い道や事業の状況・計画などについての面談があります。
  3. 融資
    融資決定後、契約に必要な書類を送付します。

※申込みから融資が決まるまでの平均所要日数は2週間程度です(土日、祝日を含む)。詳しくは、最寄りの日本公庫支店窓口にご相談ください。

※日本公庫(国民生活事業)の融資を利用する際の手続きは、下記のホームページでもご覧いただけます。
日本政策金融公庫
詳しくは、お近くの日本公庫の各支店(国民生活事業)または「事業資金相談ダイヤル」(電話0120-154-505)にお問い合わせください。

おわりに

今回は、ソーシャルビジネスの概要や実際の事例、支援資金について解説しました。SDGsなどが一般化してきた現代において、ソーシャルビジネスは今後、より必要とされていくでしょう。

この記事が、これからソーシャルビジネスを始められる方のお役に立てれば幸いです。

※はたらくBASEでは、記事公開した時点での法律や制度に則って記事を執筆しております。新しく事業所を開業する場合や、加算などを検討する場合は、最新の法律や、地域の障害福祉サービスを所管する窓口に制度や条件等をご確認ください。

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