就労継続支援を改善

就労継続支援B型の工賃向上に欠かせない「目標工賃達成指導員」

目標工賃達成指導員をご存じですか?就労継続支援B型に必要な職種で、事業所が安定してきた際に目標工賃達成指導員を導入することで、工賃水準の向上が期待されています。
今回は、目標工賃達成指導員の詳細から導入の流れまでわかりやすく解説します。

目標工賃達成指導員とは

目標工賃達成指導員配置加算とは

目標工賃達成指導員は、就労継続支援B型という障害福祉サービスを提供する際に必要となる職種です。

そもそも就労継続支援B型とは、一般的な就労が難しい障害者や難病がある方で、雇用契約に基づく就労が困難である方に対して、就労の支援や場を提供する事業のことです。事業者は利用者の方に、就労の対価として工賃を支払わなければなりません。

就労継続支援B型の平均工賃は、令和元年度で16,369円となっており、年々、上昇しています。しかし厚生労働省によると、平成27年度時点で、平均工賃月額が1万円未満の事業所が全体の約4割となっており、まだまだ工賃水準は低いままです。

厚生労働省令には、就労継続支援B型事業者は、「利用者が自立した日常生活又は社会生活を営むことを支援するため、工賃の水準を高めるよう努めなければならない。」と記されています。これを実現するために、目標工賃達成指導員加算は制定されています。

目標工賃達成指導員の役割

目標工賃達成指導員は、目標工賃額を達成するために配置される専門スタッフで、就労継続支援B型事業所のみ算定可能な職業です。主な業務内容は、法律上明示されていませんが、大きく4つにわかれます。

  • 受注している作業の単価を上げてもらうために交渉をする
  • 新しい作業を受注できるように営業をかける
  • 作業能力アップに関する支援を行い、より高単価の作業受注を目指す
  • 作業工程を見直すなど作業効率が上がるように改善をはかる

目標工賃達成指導員については、目標工賃を達成するために配置されるので、指定基準を満たすために配置される職業指導員や生活支援員とは区別して考えます。

また、配置することによって報酬が加算されるため、職業指導員や生活支援員と兼務はできません。事業所の生産活動が安定し、人員に余裕が出てきた場合、職業指導員の方を「目標工賃達成指導員」に転換することは可能です。

なお、非常勤職員としての配置も可能です。目標工賃達成指導員になるために必要な資格もありません。しかし、ここまで解説してきた目標工賃達成指導員の業務を行うためには、営業や交渉、ニーズを読み取るスキルが必要となってきます。福祉関係の知識ももちろん必要ですが、ビジネススキルも重要です。

目標工賃達成指導員を導入するには

目標工賃達成指導員配置加算の基本要件

目標工賃達成指導員加算の基本的要件は以下の通りです。

  • 工賃向上計画を作成すること
  • 目標工賃達成指導員を、常勤換算方法※で1人以上配置すること
  • 生活支援員、職業指導員の配置を7.5:1以上(利用者数:職員数)にすること
  • 目標工賃達成指導員、生活支援員、職業指導員の配置を6:1以上(利用者数:職員数)にする

※常勤換算とは、フルタイムに換算した場合に事業所で働いている平均職員数です。事業所で働く職員の全てが正社員で常勤勤務というわけではありません。パートやアルバイトなど、労働時間が異なる方もいます。

そのため全従業員対象に、雇用形態に関わらず労働時間で計算し、フルタイムに換算した場合に「常勤の人が何人働いているか」の人数を算出します。

常勤換算の計算方法は「常勤職員の人数」+「非常勤職員の勤務時間÷常勤職員が勤務すべき時間」です。

工賃向上計画とは

先ほど紹介した、目標工賃達成指導員加算の基本的要件の中にあった、工賃向上計画について説明します。目標工賃達成指導加算をとるには、就労継続支援B型の利用者に支払う工賃を上げるための計画を3年単位で策定する必要があります。

向上計画を実行に移すと、既存の生活指導員や職業指導員だけでは人手不足になってしまうことがあります。そこで目標工賃達成指導員を配置することで計画が適正化されます。また、工賃向上計画は作成するだけでなく、自治体の管轄課に提出して承認を得る必要があります。

工賃計画表を提出するにあたって必要な書類は以下の通りです。

  • 工賃向上計画届出書
  • 事業所の概要
  • 目標工賃の設定
  • 目標達成のための課題分析及び各年度に取り組む具体的方策

受領印の押された状態の工賃向上計画届出書の提出先など、提出方法は自治体によって異なるので詳しくは管轄課にお問い合わせください。

申請書類

最後に、目標工賃達成指導員配置加算のための申請書類についてご紹介します。

  • 介護給付費等算定に係る体制等に関する届出書
  • 介護給付費等の算定に係る体制等状況一覧表
  • 従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表
  • 組織体制図

申請書類提出先は自治体によって異なります。詳しくは、自治体の管轄課またはホームページをご覧ください。

おわりに

目標工賃達成指導員配置加算は利用者の方の工賃水準を上げるために、是非、検討していただきたい加算です。

利用者の方が一定数を超えてきて人員配置に余裕がある状態になってから行うと、事業所の生産活動の効率化が図れるでしょう。また、人員配置を行う際に、常勤換算への理解も深めておきましょう。

目標工賃達成指導員の実情や導入のタイミングなど更に詳しく知りたいかたは『平均工賃額を左右する「目標工賃達成指導員」の実情と導入のポイント』をご覧ください

※はたらくBASEでは、記事公開した時点での法律や制度に則って記事を執筆しております。新しく事業所を開業する場合や、加算などを検討する場合は、最新の法律や、地域の障害福祉サービスを所管する窓口に制度や条件等をご確認ください。

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