就労継続支援を始める

「事業承継」でかなえる!就労継続支援の新しいカタチ

中小企業の後継者問題は就労継続支援の事業承継で解決できるかもしれません。
実際、高齢化や担い手不足で廃業寸前の企業を福祉施設が受け継いだり、事業を拡大したりするなど事業承継の幅が広がっています。

ここでは承継に使える公的支援や福祉の可能性を解説します。

事業承継とは

事業承継とは、親族や従業員または第三者の中から後継者を選び、会社の事業を承継して引き継いでもらうことです。

元々、介護事業者・社会福祉法人は、生活困難者の救済措置制度の受け皿として出発しました。

しかしその後、福祉サービスの対象が生活困難者から国民一般に拡大し、福祉分野への民間企業等の参入もなされるなか、措置制度下での「施設管理」から、契約制度を前提とする「法人経営」への転換を迫られています。

事業継承では法人規模の拡大、あるいは法人間の連携やネットワーク化によるスケールメリットを活かせます。

また、生産性の向上、質の高い多様なサービスの提供、研究開発の促進、新たなビジネスモデルの創出、不採算地域における安定的な事業の継続、問題法人の退出・新陳代謝の促進による高い公共性・公益性の維持などを推進できます。

社会福祉法人の事業承継

社会福祉法人が地域における福祉サービスを持続し発展させて、地域への貢献活動等を担うためには、合併・事業譲渡をすることが有効な方策の一つです。

それぞれの効果、手順、困難な部分とそれに対する解決策を説明します。

合併

合併とは、2つ以上の法人が契約によって1つの法人に統合することです。

(効果)

  1. 法人が一体となることによる経営基盤の強化、事業効率化
  2. サービスの質の向上、組織活性化
  3. 人材の育成

(手順)
合併の個別の手続きは、以下のように大きく4つに分類されます。

I.法人間調整(合併を検討している法人間での調整業務)

  1. 合意形成
  2. 役員等の検討
  3. 合併契約書の作成

II.法令手続き(社会福祉法人の許認可事務を担当している行政等との調整)

  1. 事前開示(合併契約に関する書面等の備置き及び閲覧等)
  2. 評議員会の承認
  3. 所轄庁の認可
  4. 債権者保護手続き
  5. 合併の登記手続き
  6. 事後開示(合併に関する書面等の備置き及び閲覧等)
  7. 会計・税務処理

III.関係者調整等(社会福祉事業に関係する利用者や職員との調整)

  1. 職員の処遇の検討および説明
  2. 利用者や利用者家族、地域への説明

IV. 合併後に必要となる手続き等(合併後の法人内運営に必要となる手続き事項)

  1. 規程・システムなどの整備

(合併における困難さや課題とその解決方法)
厚生労働省の「合併・事業譲渡等マニュアル」11ページの図表2の「課題であった」及び「重要な課題であった」をみると以下のことがわかります。

「法人の規程や制度の統合・調整」が最も多く、次に「全体の進め方、スケジュールの立て方」、「従業員の承継、雇用確保や処遇、従業員との交渉や調整」、「許認可に関する行政との調整」が続きます。

また、「どのように『合併における困難さや課題』を解決したのか」という質問では主に以下の回答が得られました。

・行政支援の活用
・専門家(弁護士、司法書士、公認会計士、税理士、不動産鑑定士、社会保険労務士等)の活用
・相手法人との頻繁な調整会議の実施職員処遇についての調整

厚生労働省 合併・事業譲渡等マニュアル

事業譲渡

事業譲渡とは、継続していくため事業に関する組織的な財産を他の法人に譲渡・譲受することです。譲渡・譲受するものは、土地・建物などの単なる物質的な財産だけではなく、事業に必要な有形的・無形的な財産のすべてです。

(手順)
事業譲渡の手順は以下の通りです。

I.法人間調整(事業譲渡等を検討している法人間での調整業務)

  1. 調査・検討の準備
  2. 事前調査
  3. 事業譲渡等の合意形成

II.法令手続き(行政等との調整)

  1. 事業に係る各種申請
  2. 定款の変更
  3. 会計・税務処理

III.資産・負債等の移管手続き

  1. 資産・負債等の移管

IV.関係者調整等(職員や利用者等との調整)

  1. 人事・労務関連の譲渡事業等に関係する利用者や家族への説明及び地域への説明
  2. 利用者や利用者家族、地域への説明

V.事業譲渡等の後に法人内運営に必要となる手続き等

  1. 規程・マニュアル類、システムなどの整備

(事業譲渡における困難さや課題と解決方法)
厚生労働省の「合併・事業譲渡等のマニュアル」の12ページの図表3の「課題であった」及び「重要な課題であった」を見ると以下のことがわかります。

「従業員の承継、雇用確保や処遇、従業員との交渉や調整」が最も多く、次に多いのが
「全体の進め方、スケジュールの立て方」、「法人の規程や制度の統合・調整」です。

また、「どのように『事業譲渡等における困難さや課題』を解決したのか」という問いでは、主に以下の回答が得られました。

  • 行政との協議
  • 専門家(弁護士、司法書士、公認会計士、税理士、不動産鑑定士、社会保険労務士等)の活用
  • 課題解決のために準備室の設置や担当職員の配置
  • 従業員との継続的な話し合い
  • 利用者会等への十分な説明

厚生労働省 合併・事業譲渡等マニュアル

事業承継の公的支援

ここまでは、社会福祉法人の事業承継の概要を解説しました。
次に、事業承継の負担を減らす公的支援について解説します。

事業引継ぎ支援センター

事業承継を検討するにあたって、後継者をどうするかお悩みの方や、将来の事業の存続に漠然とした不安を抱いている方が多いのではないでしょうか。

そのような方を対象に、国が事業引継ぎをサポートし、スムーズな事業承継を促進するために設置されたのが事業引継ぎ支援センターです。

自社の譲渡の際に必要な手続きの手順や自社の評価額、後継者の探し方など、事業承継の際に必要な知識を手に入れられます。

事業承継・引継ぎ補助金

事業承継・引継ぎ補助金とは、中小企業・小規模事業者などが、事業承継をきっかけに新しい取り組み等を行うことや、事業再編、事業統合に伴う経営資源の引継ぎを行うことを支援する制度です。

事業承継補助金には、Ⅰ型「後継者承継支援型」とⅡ型「事業再編・事業統合支援型」があります。

Ⅰ型「後継者承継支援型」
Ⅰ型「後継者承継支援型」は、経営者交代後、後継者が新商品開発などの新たな取り組みに要する経費の一部を補助するものです。

補助金の内容は、以下のとおりです。

【Ⅰ型】後継者承継支援型 補助率 補助上限額 上乗せ額 ※1
原則枠 1/2以内 225万円 +225万円
(合計上限額450万円)
ベンチャー型企業承継枠
または、生産性向上枠
2/3以内 300万円 +300万円
(合計上限額600万)

※1 上乗せ額とは、事業転換により廃業登記費、在庫処分費、解体・処分費が発生する場合に、補助金の上限額が上乗せされるものです。

Ⅱ型「事業再編・事業統合支援型」
Ⅱ型「事業再編・事業統合支援型」は、M&Aによる事業再編・事業統合の後に新たな取り組みを行った場合、その経費の一部を補助するものです。

補助金の内容は、以下のとおりです。

【Ⅱ型】事業再編・
事業統合支援型
補助率 補助上限額 上乗せ額 ※1
原則枠 1/2以内 450万円 +450万円
(合計上限額900万円)
ベンチャー型企業承継枠
または、生産性向上枠
2/3以内 600万円 +600万円
(合計上限額1200万円)

・対象者(Ⅰ型・Ⅱ型):以下の7つの要件を満たす、中小企業及び、個人事業主と定められています。

  1. 日本国内で事業を営む者
  2. 地域経済に貢献している
  3. 暴力団などの反社会的勢力ではない、あるいはその関係性もない
  4. 法令順守上の問題を抱えていない
  5. 経済産業省から補助金指名停止措置が講じられていない
  6. 匿名性を確保しつつ公表される場合があることに同意する
  7. 補助事業の調査やアンケートなどに協力できる

おわりに

社会福祉法人にとって、福祉サービスを持続し発展させ、地域への貢献活動等を担うための「事業継承」は有効な方策の一つです。
その方策がどの様な効果をもたらすかをこの記事で理解して、事業継承を行ってみてください。

※はたらくBASEでは、記事公開した時点での法律や制度に則って記事を執筆しております。新しく事業所を開業する場合や、加算などを検討する場合は、最新の法律や、地域の障害福祉サービスを所管する窓口に制度や条件等をご確認ください。

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