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行動援護ってなに? 事業につながるサービス内容のすべて

「行動援護」とは、知的障害や精神障害により1人での行動が困難な方に対し、自傷、徘徊、異食などの危険から守るサービスです。
今回は、知識ゼロでもわかる事業内容から従業者や責任者要件など具体的な条件まで網羅した、実践に活かせる情報をお届けします。

行動援護とは

それでは、行動援護について詳しく解説します。

外出先での困難の予防・制御・介助を担う行動援護ですが、毎年増加している利用者の4割以上が障害支援区分6を占めます。

障害支援区分とは、障害の特性や状態に応じて必要な支援を総合的に判断したものです。区分は1〜6まであり、数字が上がるにつれて支援の度合いも高くなります。

行動援護を受ける方は障害支援区分が高い傾向があるため、特別な研修を受ける必要があります。利用者の障害特性を理解した専門性の高いヘルパーが、行動障害を発生する原因などを十分に見極め、外出先で起きる危険を回避するための援助や介護を計画的に行います。

外出サービスの種類

1人での移動が困難な障害者を対象とした外出支援サービスは全部で3つあります。

「同行援護」・・・視覚障害がある方の移動を支援する
「移動援護」・・・知的障害等を持った方の外出における安全を守る
「行動援護」・・・自閉症等の行動障害がある方の自宅や外出先での支援をする

ここからもわかるように、「行動援護」は利用者の行動障害に焦点を当て、外出を支援するサービスです。

2.事業内容
次に、事業内容について見ていきましょう。
1人で外出することが著しく困難な障害者に対して以下のサービスが提供されています。

  1. 行動する際に生じ得る危険を回避するために必要な援護
  2. 外出時における移動中の介護
  3. 排せつ及び食事等の介護その他の行動する際に必要な援助

行動援護の具体的なサービス

具体的には次のようなサービスです。

  • 予防的対応・・・行動の予定がわからないなどのため、不安定になり、不適切な行動がでないよう、予め行動の順番や、外出する場合の目的地での行動などを理解させる。
  • 制御的対応・・・行動障害を起こしてしまった時の問題行動を適切におさめる。
  • 身体介護的対応・・・便意の認識ができない者の介助。

サービス利用の対象者

次にサービスの対象者です。

知的障害又は精神障害により行動上著しい困難を有する方などであって常時介護を有する方のうち以下の2つに該当する方です。

  1. 障害支援区分が区分3以上
  2. 障害支援区分の認定調査項目のうち行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上

また、サービス料金は利用者の1割負担となります。ただし、月の利用料負担額の上限は世帯収入によって定められています。料金の詳細に関しては、市区町村によって異なるのでお住まいの地域の担当部署にお問い合わせください。

サービス提供の要件

行動援護は、幅広い知的障害や精神障害を持った対象者と外出を伴う支援を行うため、専門的な知識や経験が必要とされます。

行動援護に必要な人員要件は、サービスを現場で提供する「ヘルパー」と、利用者やケアマネージャーなど関係者との連携や調整を行う「サービス提供責任者」の2つがあります。これらは必要な条件が異なります。それぞれの要件について解説します。

  • ヘルパー:常勤換算2.5人以上
    A.行動援護従業者養成研修修了者又は強度行動障害支援者養成研修(実践研修)を修了している。
    B.かつ、1年以上の直接処遇経験がある。
  • サービス提供責任者:常勤ヘルパーのうち1名以上
    A.行動援護従業者養成研修課程修了者又は強度行動障害支援者養成研修(実践研修)を修了している。
    B.かつ、3年以上の直接処遇経験がある。

行動援護従事者養成研修

上記の「サービス提供の要件」にもあったように、行動援護のサービスを行うためには、「行動援護従業者養成研修」を修了している必要があります。この研修では、行動障害に関する知識や支援方法等の介護スキルを習得します。

10時間の講義研修と14時間の演習によって構成されており、研修期間は3〜4日間です。また、受講にあたっては介護の資格や実務経験の有無を問わず、誰でも参加できます。「行動援護従業者養成研修」の講義内容は以下の通りです。

【講義科目一覧(合計10時間)】

  • 強度行動障害がある者の基本的理解
  • 強度行動障害に関する制度及び支援技術の基礎的な知識
  • 強度行動障害のある者へのチーム支援
  • 強度行動障害と生活の組み立て

【演習科目(合計14時間)】

  • 基本的な情報収集と記録等の共有
  • 行動障害がある者の固有のコミュニケーションの理解
  • 行動障害の背景にある特性の理解
  • 障害特性の理解とアセスメント
  • 環境調整による強度行動障害者の支援
  • 記録に基づく支援の評価
  • 危機対応と虐待防止

強度行動支援者養成研修との違い

サービス提供の人員要件には、「行動援護従業者養成研修」の代わりに「強度行動障害支援者養成研修」でも認定されます。

どちらも知的障害や精神障害で行動に困難を抱えている方への支援に必要な研修なのでターゲットが非常に似ています。これらの違いは何なのでしょうか。実は、この2つでは『必要な場面』が異なるのです。

「強度行動支援者養成研修」=日常的に行動障害者と接している人が幅広く行動障害について学ぶ研修
「行動援護従業者養成研修」=外出時の援助に特化している研修

行動援護に係る報酬

最後に、「行動援護従業者養成研修」を事業として行う場合の報酬についてご紹介します。基本報酬は以下の通りです。

255単位(30分未満)~2,520単位(7.5時間以上)

また、行動援護には報酬の加算があります。報酬の加算は、サービスの質を評価されていた時に加算されます。利用者が事業主を選択する際、この加算を重視している傾向があるので、提供開始後もサービスの向上に努め加算を目指すことを推奨します。

  1. 特定事業所加算(5%.10%又は20%加算)
    以下、①〜③を評価されることで加算される。
    ①サービス提供体制の整備
    ②良質な人材の確保
    ③重度障害者への対応に積極的に取り組む事業所のサービスを評価
  2. 行動障害支援指導連携加算(重度訪問介護に移行する月につき1回を限度として1回につき273単位加算)
    支援計画シート等作成者と重度訪問介護のサービス提供責任者が連携し、利用者の心身の状況等の評価を共同して行うことを評価されて加算される。
  3. 喀痰吸引等支援体制加算(1日当たり100単位加算)
    特定事業所加算(20%加算)の算定が困難な事業所に対して、喀痰の吸引等が必要な者に対する支援体制を評価されて加算される。

おわりに

今回は、行動援護事業について、全く知識がない方でもわかるように、事業内容から従業者や責任者要件など具体的な条件をご紹介しました。

行動援護事業は、知的障害や精神障害を持つ方々を支援するサービスの中でも”外出して行動する”という部分で専門性が高く、またサポートを必要としている対象者も多いことから地域の介護サービスに非常に重要な役割を果たしています。

ここでご紹介した最新の要件をもとに行動援護事業の参入について検討してみてください。

※はたらくBASEでは、記事公開した時点での法律や制度に則って記事を執筆しております。新しく事業所を開業する場合や、加算などを検討する場合は、最新の法律や、地域の障害福祉サービスを所管する窓口に制度や条件等をご確認ください。

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