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気分や行動、人間関係などに影響が出てくる「統合失調症」とは?

働くことに支障が出てくる統合失調症を正しく理解していないと福祉事業所での対応も適切に行えません。福祉事業所での適切な対応に役立つよう、障害福祉サービスを提供したい方に向けて統合失調症に関する知識とその対処法をわかりやすく解説しています。

統合失調症とは?

統合失調症は、こころや考えがまとまりづらくなってしまう病気です。そのため気分や行動、人間関係などに影響が出てきます。約100人に1人がかかると言われており、決して特殊な病気ではありません。

以下では、どのような症状が現れるのかを細かく解説します。

症状

統合失調症では多様な症状がみられますが、大きく「陽性症状」「陰性症状」「認知機能障害」に分けられます。

  1. 陽性症状
    陽性症状とは、健康時にはなかった症状が現れる状態です。幻覚や妄想といった代表例の他に、自我障害といった症状が現れます。幻覚
    幻覚とは、実際に存在しないものを、あると感じてしまう症状です。統合失調症では、聴覚における幻覚である「幻聴」が症状として最も多く見られます。具体的には、「誰もいないのに声が聞こえる」「ほかの音に混じって声が聞こえるように感じる」などの症状があげられます。そのほかに、実際にはないものが見える幻視や「全身に電気が走っている、体の中で虫が這っている」など身体の異常を感じる体感幻覚など、幻覚にはさまざまな症状が含まれています。妄想
    明らかに誤った内容を信じてしまい、周りが訂正しようとしても受け入れられない状態です。妄想には、自分には全く関係のないことでも関係があるように感じてしまう「被害妄想」や、知らない人から見られているように感じる「注察妄想」などがあげられます。

    自我障害
    「ほかの人の考えが声になって聞こえる」「自分の意に反して誰かに体や考えを操られている」「自分の考えが人に伝わっている」など、自分と他人の境界が曖昧になることです。
    「自分の意思で体や思考を動かしている感覚」が失われていることが原因だと考えられています。

  2. 陰性症状
    陰性症状とは、健康時にはあったものが失われる症状のことです。具体的には、意欲の低下、感情表現の減少などがあげられます。
  3. 認知機能障害
    陽性症状と陰性症状に合わせて、認知機能障害が起きることがあります。物を覚えることに時間がかかる「物覚えの悪さ」、物を覚えられない「記憶力の低下」や仕事や勉強に集中できなくなる「集中力の低下」、計画を立てたり取捨選択ができなくなったり「判断力の低下」などの症状が現れます。

原因

統合失調症はなぜ起こるのでしょうか?
現在でも詳細は分かっていませんが、脳の神経伝達物質のバランスが崩れて混乱することが発症に関わっていると言われています。

どんな人がなりやすいのか?

統合失調症患者の多くが10代から20代のうちに発症しています。
また、発症する人はもともとストレス耐性が低い傾向にあると言われています。

統合失調症の発見方法と対処法

統合失調症の対処法として「治療法」と「周りの対処」について解説します。

統合失調症の治療法

統合失調症の治療は、薬物療法や専門家との面談、リハビリテーションを行う心理社会療法を組み合わせて行われます。

  1. 薬物療法
    薬物療法では、以下の薬を使用します。主に使われる薬:抗精神病薬
    場合によって補助的に使われる薬:抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬、気分安定薬症状の安定を見ながら上記の薬の減量や増量を行い、治療していきます。
  2. 心理社会療法
    心理社会療法には、症状や生活の状態に合わせて以下のような方法が用いられます。・心理教育
    病気や治療に関する知識を身につけ、対処法を学ぶ
    生活技能訓練(SST)
    ロールプレイ等を通じて、社会生活や対人関係のスキルを回復する訓練を行う
    作業療法
    園芸、料理、木工などの軽作業を通じて、生活機能の回復を目指す
    認知矯正療法
    認知課題とそれを日常生活に橋渡しする言語セッションを行い、社会機能の回復を目指す
    就労支援
    援助付き雇用プログラムなど、当事者毎の個別のニーズを踏まえて包括的な支援を行う

統合失調症の周りの対処

統合失調症を発症した場合、家族や周りの人はどのようなことに気を付ければいいのでしょうか?

  1. 無理をしない暮らしを行うこと
    治療やリハビリテーションなど、療養は長く続きます。心身の負担を抱え込みすぎず、公的な支援制度や社会復帰施設を活用しながら、無理せず暮らせるような工夫をしましょう。
  2. 焦らないこと
    良い治療法やリハビリテーションでも、効果が出る時期は人によって異なります。主治医や専門の職員と相談しながら、慎重にじっくりと治療やリハビリテーションに取り組むことが大切です。
  3. 分からないことは遠慮なく主治医や専門家にたずねる
    統合失調症の症状や治療法は、人によってさまざまです。良かれと思って発した言動が、人によっては逆効果になる場合もあります。症状の悪化や介護のストレスをなくすためにも、わからないことは主治医や専門家にたずねるようにしましょう。

就労における悩み

統合失調症の症状によって、働きづらさを感じる方も多くいます。
ここでは、統合失調症の方が働くうえで何に悩んでいるのかについて解説します。

  1. 疲れやすい
    統合失調症の方は思考や情報がまとめづらくなる症状や日常の緊張や不安によって、日常生活を送っているだけでも疲れが出てしまいます。
  2. 仕事効率の低下
    判断力や記憶力、理解力の低下によって、仕事のミスが増えたり、覚えるまでに時間がかかったりしてしまうケースが少なくありません。
  3. 仕事に集中できない
    幻覚や妄想や、認知機能障害の症状によって仕事に集中できないことがあります。

統合失調症の方は、働くうえで多くの悩みを抱えています。
周囲の人が症状について理解し、短時間勤務の提案や作業のサポートなどを行うことで働きやすい環境を作ることができるでしょう。

おわりに

今回は統合失調症について広く解説しました。

統合失調症は、誰にでも発症する可能性があり、症状も多様で、日常生活に支障をきたします。症状の改善には、周りの人の理解とサポートが重要です。
この記事が、統合失調症に対する就労支援サービス立ち上げの参考になれば幸いです。

※はたらくBASEでは、記事公開した時点での法律や制度に則って記事を執筆しております。新しく事業所を開業する場合や、加算などを検討する場合は、最新の法律や、地域の障害福祉サービスを所管する窓口に制度や条件等をご確認ください。

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