農副連携を始めたいけどどこから着手したら良いかわからない方へ、農福連携スタートへのノウハウを解説していきます。農業従事者は毎年減少の一途を辿っており、荒廃農地も増えてきている現代に、農福連携を取り入れることで明るい未来が見えてきます。
農福連携とは
農福連携とは、障害者などが農業分野で活躍することを通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取り組みです。
農福連携に取り組むことで、障害者などの就労や生きがいづくりの場を生み出すだけでなく、担い手不足や高齢化が進む農業分野において、新たな働き手の確保につながる可能性があり、より一層の推進が求められています。
農福連携のタイプ
農福連携には大きく4つのタイプがあります。
- 障害福祉事業所等が農業に取り組むタイプ(就労継続支援A型・B型など)
就労継続支援A型についてはこちら
就労継続支援B型についてはこちら
- 障害福祉の共同受注制度を利用して農作業請負を行うタイプ
- 企業が雇用率達成のために特例子会社※1を作り農業に特化するタイプ
- 農家や農業生産法人などが障害者を雇い入れるタイプ
※1 特例子会社とは、障害者の雇用に特別な配慮をし、厚生労働大臣の認可を受けて、障害者雇用率の算定において親会社の一事業所とみなされる子会社です。
農福連携のメリット
ここでは農福連携のメリットについて、農業・農村側と福祉(障害者)側の課題をもとに解説していきます。
農業・農村の問題
- 農業労働力の確保
毎年、新規就農者の2倍の農業従事者が減少している - 荒廃農地の解消
佐賀県と同程度の面積が荒廃農地となっている
農業・農村のメリット
- 農業労働力の確保
- 農地の維持・拡大
- 荒廃農地の防止
- 地域コミュニティの維持など
福祉(障害者)の課題
- 障害者等の就労先の確保
障害者約964万人のうち雇用施策対象となるのは377万人。しかし、そのうち雇用(就労)しているのは94万人しかいない。 - 工賃の引き上げ
H30年度の障害者平均工賃を時給換算すると214円となり、同年度の最低賃金の全国平均874円の4分の1以下となっている。
福祉(障害者等)のメリット
- 障害者等の雇用の場の確保
- 賃金(工賃)向上
- 生きがい、リハビリ
- 一般就労のための訓練
農福連携に関する補助金
農山漁村振興交付金について
農福連携に取り組む農業法人や福祉サービス事業者などに対するソフト・ハードの一体的な支援として、農山漁村振興交付金(農福連携対策)があります。この章では、農山漁村振興交付金について解説します。
- 本事業の対象となる障害者
①18歳以上の身体障害者、知的障害者、精神障害者及び厚生労働大臣が定める特殊の疾病にある者
②生活困窮者自立相談支援事業による就労に向けた支援計画が作成されている生活困窮者
③要介護認定を受けた高齢者 - 本事業の対象となる事業主体
農業法⼈、社会福祉法⼈、特定⾮営利活動法⼈、⼀般社団法⼈、⼀般財団法⼈、公益社団法⼈、公益財団法⼈、⺠間企業ほか
※個人では助成を受けられません。
農山漁村振興交付金には、ソフト対策とハード対策があります。原則として、ソフト対策とハード対策を併せて実施します。
①農福連携支援事業(ソフト対策)
- 内容
作業の効率化や⽣産物の品質向上など、農福連携を持続するための取組に必要な経費を⽀援します。雇⽤・就労する障害者などの賃⾦や法⼈運営費は助成の対象外です。 - 事業実施期間
2年間(+⾃主取組︓1年間) - 交付金額
上限︓150万円/年(マニュアルを作成する場合は初年度に40万円を加算)
②農福連携整備事業(ハード対策)
- 内容
農福・林福・⽔福連携推進のため、障害者や⽣活困窮者の雇⽤・就労、⾼齢者の⽣きがいづくりやリハビリを⽬的とした農林⽔産物⽣産施設、農林⽔産物加⼯販売施設※2または付帯施設(休憩所、衛⽣設備、安全設備等)の整備の支援
※2 加⼯販売施設に供する農産物等は事業実施主体及び連携する者が⽣産したものが過半を占めること
- 事業実施期間
2年以内 - 交付率等:1/2
上限金額
①簡易整備型(200万円)
比較的安価な設備投資による農林水産物生産施設及び附帯施設の整備②介護・機能維持型(400万円)
高齢者の介護、機能維持、機能改善等の介護福祉を目的とした農林水産物生産施設及び附帯施設の整備③⾼度経営型(1,000万円)
収益性の高い複合的な営農形態の導入又は農林水産物の生産、加工、販売等を併せて行う農林水産物生産施設等の整備④経営⽀援型(2,500万円)
農福連携の取組を通じて経営改善を積極的に進めるために必要となる農林水産物生産施設等の整備
申請のポイント
農山漁村振興交付金申請の際に、気を付けるポイントについて解説します。
・ 農山漁村振興交付金事業実施提案書
交付金申請では、農山漁村振興交付金事業実施提案書を提出する必要があり、提案書には以下の添付書類が必要です。
- 設立趣意書、定款、規約等
- 提案者の活動内容の概要が分かる資料
- 連携する団体等がある場合は、その団体等の概要が分かる資料
- 提案者の財務状況が分かる資料(過去の決算書、貸借対照表、損益計算書、預金残高証明書等)
- 提案された事業を主導する代表者、運営責任者(プロジェクトマネージャー)及び経理責任者のこれまでの取組実績並びに提案された事業の実施に必要なノウハウ、マネジメント能力、経理処理能力等を有しているか判断するための資料
- 整備予定地の現況写真及び計画地区位置図、計画施設平面図等の図面
- 整備予定地の所有状況関係資料
- 施設等の規模決定根拠資料及び事業費の算出決定根拠資料
- 施設等の管理規定案又は利用規定案(実施要領案の第 11 を参照)
- 整備予定地が、都市計画法第18条の2に規定する市町村基本方針、都市緑地法(昭和48年法律第72号)第4条に規定する市町村基本計画等において、保全の方針が示されている農地にあっては、当該地域の市町村基本方針又は市町村基本計画等の写し
- 費用対効果の算定資料(「農福連携整備事業」を実施する場合のみ
上記の添付書類の書き方については、農政局が参考例を出しているので、そちらをご確認ください。
農山漁村振興交付金事業実施提案書
・必須要件チェックシート
交付金を受けるには、必要条件を満たす必要があります。チェックシートを活用して、必要条件を満たしているか確認してみましょう。
必須要件点検シート(農福連携支援事業及び農福連携整備事業)
・費用対効果算定表(農福連携対策)
交付金を受けるには、事業の費用対効果が1.0以上でなければなりません。算定表を活用して、費用対効果を確認しましょう。
費用対効果算定表
その他の助成金について
農福連携に関連するその他の助成金についてご紹介します。
- 工賃向上計画支援事業(農福連携による障害者の就農促進プロジェクト)
農業分野での障害者の就労を支援し、障害者の工賃向上及び農業の支え手の拡大等を図るため支援します。
支援内容
就労継続支援A型・B型事業所が、生産活動として農業を行う場合、農業の専門家による農業技術等のノウハウ支援を受けることができます。
- 社会福祉施設等施設整備費補助金
障害者の社会参加支援及び地域移行支援を更に推進するため、障害福祉サービス等の基盤整備を図ります。
支援内容
社会福祉法人やNPO法人等が、障害福祉サービス事業所を立ち上げ、障害者の就労支援を実施しようとする場合、施設整備の経費の一部で支援を受けることができます。
おわりに
この記事では、農福連携の概要や助成金について解説してきました。
農福連携には、農業の人手不足や荒廃農地の防止だけでなく、障害者のリハビリになったり、生きがいを生み出したりと様々なメリットがあります。
ノーマライゼーションの観点からも、農福連携は、今後より重要視されていくでしょう。
この記事をきっかけに、農福連携を考えてみてはいかがでしょうか?