サービス管理責任者の行う役割や業務内容は多くの障害福祉サービスにとって必要不可欠なものです。サービス管理責任者がいなければ多くの事業所は成り立ちません。業務内容やサービス管理責任者になるための条件を知ることで、事業所の運営も円滑に進みます。
サービス管理責任者の概要
サービス管理責任者とは
サービス管理責任者は、障害福祉サービスを提供する事業所において、適切なサービスが提供できるように全体的な管理を行う職業です。障害者総合支援法により配置が義務付けられており、障害福祉サービス事業所のサービス品質向上のために、欠かすことのできない役職です。
サービス管理責任者の主な仕事内容
サービス管理責任者の主な役割は以下の3つです。
- 支援計画の管理
障害を持った方が障害福祉サービスを利用する前に必要となるのが、サービス管理責任者が作成する「個別支援計画」です。これは「利用者の方がどのような障害を持っているのか」「利用者の方が今後どのようになりたいのか」という情報に基づいた目標設定になります。サービス管理責任者は個別支援計画を作成する為に、利用者の方やご家族と面談し、現在の状況や相談の背景などを把握して目標を設定する「アセスメント」を行います。そこで得られた情報を基に個別支援計画の原案を作成します。支援にあたるスタッフと会議を行い、計画の修正後、利用者やご家族に、個別支援計画の内容を説明します。同意が得られた後、計画の進捗状況を調査(モニタリング)し、必要に応じて計画の見直し等を行います。
- 職員への指導や助言
サービスを管理する立場として、マネジメントも重要な仕事です。スタッフのスキルアップを目的とした研修の企画や実施、相談も行います。 - 関係者や関係機関との連携
利用者に適したサービスを提供するには、医療機関や行政など、他分野と連携して包括的なサポート体制を築くことが重要です。関係者と連携を取り、利用者の方に適したサービスが提供されるように調整を行います。
サービス管理責任者と管理者の違い
障害福祉サービスを運営するにあたって、サービス管理責任者の他に、管理者という職種があります。管理者は施設全体の指揮を執る役割を担います。具体的には何が違うのか、以下の表にまとめてみました。
管理者 | サービス管理責任者 | |
指定要件 | ・専従。非常勤も可。 ※専従:サービス提供時間帯を通じて、職員が駐在する必要がある。 |
1名以上は専任で常勤 ※専任 : 特定の業務の主たる担当者として特定されていること。 ※常勤 : 雇用形態が常勤職員として雇用されていること。(週40時間労働) |
対象像 | ・施設長(管理職)を想定 | サービス提供部門の管理職又は指導的立場の職員を想定(管理職でなくても可) |
要件 | ・社会福祉主事の資格を有するか又は社会福祉事業に2年以上従事した経験のある者 ・社会福祉施設長資格認定講習会を修了した者(最低基準) |
実務経験(3~10年) /サービス管理責任者研修/児童発達支援管理責任者研修修了 /相談支援従事者研修(講義部分)受講 |
責務 | ・従業者及び業務の一元的な管理や規定を遵守させるために必要な指揮命令 | ・個別支援計画の作成やサービス提供プロセスの管理 |
業務内容 | ①利用者・市町村への契約支給量報告等 ②利用者負担額の受領及び管理 ③介護給付費の額に係る通知等 ④提供するサービスの質の評価と改善 ⑤利用者・家族に対する相談及び援助 ⑥利用者の日常生活上の適切な支援 ⑦利用者家族との連携 ⑧緊急時の対応、非常災害対策等 ⑨従業者及び業務の一元的管理 ⑩従業者に対する指揮命令 ⑪運営規程の制定 ⑫従業者の勤務体制の確保等 ⑬利用定員の遵守 ⑭衛生管理等 ⑮利用者の身体拘束等の禁止 ⑯地域との連携等 ⑰記録の整備 |
①個別支援計画の作成に関する業務 ②利用者に対するアセスメント ③利用者との面接 ④個別支援計画作成に係る会議の運営 ⑤利用者・家族に対する個別支援計画の説明と交付 ⑥個別支援計画の実施状況把握(モニタリング) ⑦定期的なモニタリング結果の記録 ⑧個別支援計画の変更(修正) ⑨支援内容に関連する関係機関との連絡調整 ⑩サービス提供職員への技術的な指導と助言 ⑪自立した日常生活が可能と認められる利用者への必要な援助 |
サービス管理責任者が必要な事業所
サービス管理責任者が義務付けられている障害福祉サービスは以下の通りです。
- 療養介護
- 生活介護
- 共同生活介護(ケアホーム)
- 施設入所支援
- 共同生活援助(グループホーム)
- 宿泊型自立訓練
- 自立訓練(機能訓練)
- 自立訓練(生活訓練)
- 就労移行支援
- 就労継続支援A型
- 就労継続支援B型
これらのサービスを提供している事業所はサービス管理責任者が必要です。
サービス管理責任者になるには
では、実際にサービス管理者になるにはどうすればいいのでしょう。ここからは必要な経験や研修について解説します。
①実務経験
サービス管理責任者になるには、実務経験を積む必要があります。
以下に記載する経験を満たしてからでないと、資格取得に必要な研修が受講できません。
- 規定の事業所や施設等で3年以上の相談支援業務
- 規定の事業所や施設等で8年以上の直接支援業務
- 社会福祉主事任用資格所有者、介護職員初任者研修修了者、保育士、児童指導員任用資格者、精神障害者社会復帰指導員任用資格者は5年以上の直接支援業務
- 国家資格等の業務に従事し1年以上
②基礎研修
サービス管理責任者の資格取得には、まず基礎研修の受講が必要です。前章で説明した実務経験を満たしている方は、基礎研修の受講だけで受講後3年間はサービス管理責任者としてみなされます。ただし、令和元年〜令和3年までに受講した方が対象です。
- 相談支援従事者初任者研修講義の一部(11.5時間)
- サービス管理責任者等研修(15時間)
③実践研修
サービス管理責任者基礎研修を受講した方が受講できる研修です。また、過去5年間に2年以上の相談支援または直接支援業務の実務経験がある方が研修を受けることができます。実践研修を受講後、正式にサービス管理責任者として勤務が可能となります。
- サービス管理責任者等実践研修(14.5時間)
④更新研修
サービス管理責任者実践研修を受講後、5年に1度、資格の更新研修が必要となります。過去5年間に2年以上のサービス管理責任者などの実務経験がある、または現在サービス管理責任者として従事している方が対象です。
- サービス管理責任者等更新研修(13時間) ※2024年までは6時間程度に短縮可能
おわりに
今回はサービス管理責任者に解説してきました。障害福祉サービスを提供するには、重要な役割を果たします。役割を把握して、事業の組織づくりに活かしてみてください。