福祉のキャリア論

福祉サービス全般を担える職業「社会福祉士」

子どもから高齢者までを支援し、福祉事業所と深い関わりを持つ社会福祉士。有資格者は毎年1万人増えており、勤め先は医療機関や行政など多岐に渡ります。
仕事内容や課題、資格取得の方法など社会福祉士のキホンをポイントにわけて解説します。

社会福祉士とは

社会福祉士とは「社会福祉士及び介護福祉士法」に基づく国家資格を取得した人が就く職業です。
身体的・精神的な障害や、高齢または貧困などの理由から日常生活に支障をきたしている方の福祉に関する相談に応じて、サービスの調整や援助を行います。

勤務先

活躍の場は介護や医療、そして福祉の現場などです。社会福祉士ではなく、ソーシャルワーカーやケースワーカーなど別の肩書きで呼ばれることも多くあります。主な勤務先は以下の通りです。

  • 介護分野(別名:生活相談員)
    長期入所が可能な介護施設(有料老人ホーム、特別養護老人ホームなど)、デイサービス(通所介護)やショートステイ(短期入所)サービスを提供している事業所など
  • 医療分野(別名:医療ソーシャルワーカー)
    一般病院・診療所、精神科病院、保健所・保健センターなど
  • 福祉分野(別名:ケースワーカー、生活指導員など)
    福祉事務所、障害者支援施設、児童福祉施設など

仕事内容

  • 相談業務
    社会福祉士の主な仕事の一つが相談業務です。相談を通じて、利用者が抱えている問題を分析し、必要な支援内容を検討することで、介護保険や補助金制度、福祉施設への入居方法、介護サービスの利用方法など、適切な支援サービスや福祉施設を提案します。
  • 支援サービスの提供・管理
    安心して支援サービスを利用できるよう手続きをしたり環境を整備したりするのも社会福祉士の仕事です。サービス提供後も、相談内容の記録やサービスの管理、福祉関係の法律への対応などを行います。
  • 関係機関との連携・サービスの見直しや調整
    行政機関や医療機関などと連携を図り、利用者が十分な支援サービスを受けられるようにすることも社会福祉士の役目です。提供している支援サービスが常に利用者にとって適切であるとは限りません。利用者の状況に応じて、サービスの見直しや調整も行います。
  • 介護業務
    介護施設などに勤務する場合、社会福祉士が介護スタッフを兼任するケースも少なくありません。食事や入浴といった日常生活の介護に加えて、掃除や洗濯などを担当することもあります。

社会福祉士の魅力

ここまでは、社会福祉士の概要について解説しました。
次に、社会福祉士の魅力について解説します。

社会福祉士の資格の魅力とは

社会福祉士は国家資格なので、取得すれば生涯有効です。そのため、結婚や出産などで現場を離れていても復職しやすい職業といえます。国家資格であるため信頼度が高く、需要が大きいという点も魅力です。社会的貢献度も高いので、やりがいも感じられるでしょう。

社会福祉士の仕事の魅力とは

仕事の魅力として、相談者に対して最適なサポートができる事があげられます。相談者の状況は人それぞれで、1人として同じ人はいません。相談者にしっかりと向き合い、状態を把握し、最も良いサポートをすることが社会福祉士の役割です。

良いサポートをするためには、保険制度や、医療、介護、福祉、行政サービスなどの幅広い知識が必要です。こうした分野について日々学んでいくことが、より良いサポートにつながります。同時に、自分自身の成長やキャリアアップにもつながるので、大きな達成感が得られるでしょう。

社会福祉士はこんな人におすすめ

社会福祉士は人との関わりが多い仕事です。人と関わる仕事がしたい、人のためになる仕事がしたいという人にはおすすめですが、その気持ちだけで務まるわけではありません。

社会福祉士の仕事は、支援を必要とする人から相談を受けてはじまります。相談者に合ったサポートができるよう、しっかりと話を聞き、状況を分析する能力が必要になります。

社会福祉士における課題

どんな仕事にも課題はあります。ここでは、社会福祉士においてどんなことが辛く、大変だと感じるかを解説します。

深刻な問題と向かい合う精神的負担

社会福祉士が向き合う利用者は深刻な問題を抱えていて、助けを必要としていることがほとんどです。認知症や障害をもつ人が感じている当事者の不安や悲しみに寄り添うことが求められるため、どこかで仕事としての切り替えを行うことが大切です。

社会福祉士は、利用者の人生や命に関わる重要な職業です。精神的に負担を感じてしまうこともあるでしょう。しかし、その分やりがいも大きい仕事です。

利用者に寄り添う姿勢を保つこと

社会福祉士が向き合う利用者は、様々な困難に直面しており、本来の自分の姿を見失って取り乱していることもあります。ときには、寄り添うべき利用者に暴言を言われ、不安定な言動に付き合う必要が出てくるかもしれません。

そのような場合でも事実関係を冷静に確認し、最善策を提案できるよう辛抱強く寄り添う姿勢が必要です。もちろん、あまりに業務に支障をきたす場合や、警察を呼んで対処しなければならない場合などは事情が異なります。

対人トラブルや人間関係の疲れがある

社会福祉士の仕事だけでなく、福祉職・医療職を初めとした、直接人と関わる全ての職業に言えることですが、対人トラブルも課題の一つです。利用者と揉めてしまうこともあれば、その家族や代理の相談者とも言い争いになることもあり得ます。また、利用者と関係施設の調整を行う際にトラブルになることもあります。

対人トラブルの解決策に正解はなく、完全に避けたり切り離したりすることも困難です。しかしその分、最後に面と向かって「ありがとう」と言ってもらえる、魅力的な仕事でもあります。

社会福祉士になるには

社会福祉士は、資格取得者のみが名乗れる名称独占資格の国家資格です。資格取得のためには、社会福祉士国家試験に合格する必要があります。国家試験を受けるにも受験資格が必要です。以下では、受験資格取得方法を説明します。

▼社会福祉士国家試験 資格取得ルート図

(画像=公益財団法人 社会福祉士振興・試験センター)

福祉系の大学・短大等で指定科目履修によって受験資格を取得する場合

(第1号)福祉系大学等(4年)で指定科目を履修・卒業する
(第4号)福祉系短大等(3年)で指定科目を履修・卒業し、相談援助実務を1年以上経験する
(第7号)福祉系短大等(2年)で指定科目を履修・卒業し、相談援助実務を2年以上経験する

短期養成施設等での修学によって受験資格を取得する場合

(第2号)福祉系大学等(4年)で基礎科目を履修・卒業し、短期養成施設等で6カ月以上必要な知識及び技能を修得する
(第5号)福祉系短大等(3年)で基礎科目を履修・卒業し、相談援助実務を1年以上経験し、短期養成施設等で6カ月以上必要な知識及び技能を修得する
(第8号)福祉系短大等(2年)で基礎科目を履修・卒業し、相談援助実務を2年以上経験し、短期養成施設等で6カ月以上必要な知識及び技能を修得する
(第9号)社会福祉主事養成機関(2年以上)を修了した後、相談援助実務(2年以上)を経験し、短期養成施設等で6カ月以上必要な知識及び技能を修得する
(第12号)指定資格の実務を経験4年以上経験し、短期養成施設等で6カ月以上必要な知識及び技能を修得する

一般養成施設等での修学によって受験資格を取得する場合

(第3号)一般大学等(4年)を卒業し、一般養成施設等で1年以上必要な知識及び技能を修得する
(第6号)一般短大等(3年)を卒業し、相談援助実務を1年以上経験し、一般養成施設等で1年以上必要な知識及び技能を修得する
(第10号)一般短大等(2年)を卒業し、相談援助実務を2年以上経験し、一般養成施設等で1年以上必要な知識及び技能を修得する
(第11号)相談援助実務を4年以上経験し、一般養成施設等で1年以上必要な知識及び技能を修得する

支援制度

資格取得等を経て就労した後、一定期間就労が継続された場合に、学費に掛かった借入金の返還を免除する貸付制度があります。

社会福祉士修学資金貸付制度

  • 対象者:養成施設の在学者
  • 貸付金額:月額5万円以内(在学期間)
  • 入学準備金(20万円以内)、就職準備金(20万円以内)等の加算が可能

都道府県ごとに貸付対象者が変わってきますので、お住いの県の社会福祉協議会のホームページをご覧ください。

おわりに

社会福祉士は、精神的負担などの課題がありますが、相談者に最適なサポートが出来たときに抱く達成感が大きい職業です。社会福祉士を目指す際は、資金貸付制度も利用してみてください。

※はたらくBASEでは、記事公開した時点での法律や制度に則って記事を執筆しております。新しく事業所を開業する場合や、加算などを検討する場合は、最新の法律や、地域の障害福祉サービスを所管する窓口に制度や条件等をご確認ください。

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