ストレス障害について
(画像=はたらくBASE)

ストレスは一歩間違えると障害と呼ばれるレベルまで身体を蝕みます。 今回は心的外傷後ストレス障害(PTSD)に代表されるストレス障害の概要だけでなく、引き起こされる症状、支援者が障害者をサポートする上で押さえておきたいポイントを解説します。

目次

  1. 1.ストレス障害の概要
    1. (1)ストレス障害とは
    2. (2)ストレス障害の症状
    3. (3)ストレス障害の治療
  2. 2.ストレス障害をサポートするには
    1. (1)身近な人が発症した時の心のケア
    2. (2)職場で行う心のケア
  3. 3.おわりに

1.ストレス障害の概要

(1)ストレス障害とは

ストレス障害には急性ストレス障害と心的外傷後ストレス障害があります。

  1. 急性ストレス障害(ASD)
    急性ストレス障害(ASD)とは、トラウマになる出来事(外傷的出来事)を経験して間もなく始まり、1か月未満で消失する、日常生活に支障をきたす強く不快な反応です。急性ストレス障害の患者は、直接的・間接的におそろしい出来事に直面した経験があります。

    直接的な例としては暴力や死の脅威の経験、間接的な例としては、家族や友人、他者に起きた出来事を目撃したり知ったりすることなどがあります。患者はその出来事を心の中で繰り返し体験し、出来事を思い出させるようなものを避けようとするため、ストレスが増大します。

    ASDの患者は解離症状が現れます。例としては、感情の麻痺、自分が自己から切り離されているような感覚、自分が現実の存在ではないように感じることがあります。外傷的出来事が強烈・反復的であるほど、急性ストレス障害になる可能性が高くなります。

    ASDを放っておくと、後に心的外傷後ストレス障害(PTSD)になる可能性があるため、より早期の治療介入を行うことで症状の長期化を防止することが重要です。

  2. 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
    心的外傷後ストレス障害(PTSD)とは、トラウマになる圧倒的な出来事(外傷的出来事)を経験した後に始まり、1か月以上続く、強力で不快な反応です。しかし、トラウマ的な出来事=心的外傷後ストレス障害ではありません。

    PTSDの原因になりやすいのは、恐怖、無力感、戦慄の感情を引き起こす出来事です。具体的には、戦闘、性的暴行、自然災害や人災です。

    PTSDは1か月以上続きますが、 ASDの延長として発症することもあれば、出来事から最長6か月経って発症することもあります。

(2)ストレス障害の症状

精神障害の診断・統計マニュアルの最新版、DSM-5によると以下のものがストレス障害の症状として診断されます。

  1. 急性ストレス障害(ASD)
    外傷的出来事を直接または間接的に体験した経験を持ち、さらに以下の全てが3日〜1か月間みられる状態です。

    1.その出来事についての苦痛を伴う記憶が、頭の中に割り込んでくるように繰り返し蘇り、制御できない
    2.その出来事についての苦痛を伴う夢を繰り返しみる
    3.外傷的出来事が、たとえばフラッシュバックの形で、繰り返し起きているように感じる
    4.その出来事を思い出したとき(似たような場所に入り込む、その体験の際に耳にしたものと似た音を聞くなど)に強い精神的または身体的苦痛を感じる
    5.肯定的感情(幸福感、愛情など)が感じられない状態が持続する
    6.現実感が変化している(ぼーっとするなど)
    7.外傷的出来事の核心部分についての記憶を失っている
    8.その出来事に関連した苦痛をもたらす記憶、思考、または感情を避けようとする

  2. 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
    PTSDの症状には大きく4つあります。

・侵入症状
外傷的出来事が、意図しない形で何度も現れます。出来事を思い出すのではなく、実際にその出来事が起こっているように再体験する「フラッシュバック」が起きたり、出来事やそれを思い出させるものに対して強い反応を示したりすることもあります。

・回避症状
トラウマを思い出させる物事(活動、状況、人物)を執拗に避けるようになります。暴力をふるわれた場所に行くことを避けたり、外傷的出来事について考えたり、感じたり、話したりするのを避けようとすることがあります。

・思考や気分に対する悪影響
感情の麻痺や、自分が他者から切り離されていると感じる、それまで楽しんでいたことへの関心が薄くなるなどの影響が現れます。

外傷的出来事についての考え方が歪み、起きたことについて自分や他人を責めたり、自分だけ生き残ってしまったなどの罪悪感を抱いたりすることもあります。その結果、恐怖、戦慄、怒り、恥辱などの否定的な感情しか感じず、幸福感や満足感、愛情を感じられなくなります。

・覚醒レベルと反応の変化
睡眠や集中することが難しくなる場合や、危険の兆候に敏感になることがあります。少しのことで驚くようになることもあります。また、自分の反応を制御するのが難しくなり、無謀な行動や、怒りを爆発させる場合があります。

(3)ストレス障害の治療

  1. 急性ストレス障害(ASD)
    急性ストレス障害の人の多くは、外傷的出来事から離れ、患者自身の苦しみに理解や共感を示してもらいながら適切な支援を受け、出来事とそれに対する自分の反応について話す機会があれば、病気から回復します。

    体験談を人に何度か話すことで効果がみられることもあります。愛する人や友人、もしくは医師や他の医療専門家がこのような支援を行うことができます。医師が不安を和らげたり、睡眠を促す薬を一時的に処方したりする場合もありますが、通常、それ以外の薬(抗うつ薬など)は処方しません。

  2. 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
    ・精神療法(心理療法)
    PTSD治療の主軸は精神療法です。精神療法の初期段階ではPTSDに対する理解が重要です。周囲が想定しているようなPTSDの症状とは異なる症状がみられる可能性があることを患者と支援者が理解することが精神治療をする上で非常に役立ちます。

    また、呼吸やリラクゼーションなどのストレス管理法もPTSD治療として重要です。ヨガなどの不安を和らげてコントロールする運動を行うと症状が軽くなることがあります。

    通常は、認知行動療法(CBT)の一種であるエクスポージャー療法と呼ばれる精神療法が用いられます。エクスポージャー療法では、不安の発生要因は「刺激」とされており、慢性化や悪化の要因は「回避」することである言われています。

    このような場合には回避を中止し、刺激に自然に触れることが有効です。この逆説的な治療法で、多様な不安症において極めて高い効果が報告されています。安心・安全を保証しながら、段階的に現実の事物や過去の記憶といった刺激に触れ、「触れても大丈夫か」などを話し合って確認します。

そうすることで、刺激に触れても過剰な反応が生じなくなり、外傷的出来事を思い出す物事の回避によって生まれてきた活動の狭まりが少なくなります。

・精薬物療法
抗うつ薬は、PTSDに対する第1選択の治療法と考えられています。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やミルタザピン、ベンラファキシンなどの抗うつ薬が最もよく推奨されます。

不眠や悪夢の治療には、オランザピンや抗精神病薬としても使われるクエチアピン、または高血圧の治療にも使われるプラゾシンなどの薬が投与されることもあります。しかし、これらの薬でPTSD自体が治療されるわけではありません。

2.ストレス障害をサポートするには

(1)身近な人が発症した時の心のケア

心の不調のサインは、自分では気づきにくいことが多く、気づいていても「家族や友達に心配をかけたくない」という思いから誰にも相談できずに抱え込むケースが少なくありません。そこで重要なのは発症者の身近にいる方々の「気づき」です。

「いつも」と違う以下のような点が、10日から2週間以上続く場合は、心の不調を表している恐れがあります。厚生労働省が提示している「気づき」のポイントをまとめました。

〈身体面〉
睡眠の変化・・・朝早く目が覚める・夜中に何度も目が覚める・寝つきが悪いなど
食欲・体重の変化・・・食欲がない・食べてもおいしさを感じない・食欲が急に増えた・体重が減った、または増えた
疲労がとれない・・・朝からぐったりと疲れきっている・疲労感がぬけない
その他の変化・・・頭が重い・肩/首が重い・下痢や便秘が続く

〈行動面〉
遅刻・欠勤・・・会社に遅刻することが増えた・欠勤することが増えた
出社拒否・・・会社に行きたがらない
会話・・・口数が減る・「自分はだめな人間だ」など否定的な発言が増える
日常生活・・・新聞やテレビを見なくなった・人との接触を避けるようになった

「気づき」の指標を意識し、相談に繋げることや療養を支援すること、心の病気への理解することが重要です。

(2)職場で行う心のケア

職場で行うケアもまた、厚生労働省が提示している「4つのケア」を職場内で推進させ、職場環境の改善や精神的な不調のケア、休職から職場復帰する際の支援などを充実させる必要があります。「4つのケア」は以下の通りです。

  1. セルフケア
    以下の項目に対して、事業者は労働者に教育研修や情報提供などの支援が必要です。
    ・ストレスチェックやメンタルヘルスに対する正しい理解
    ・ストレスチェックなどを活用したストレスへの気づき
    ・ストレスへの対処

  2. ラインによるケア
    職場環境の把握や労働者からの相談対応。職場復帰における体制を整えることもケアの一環になります。

  3. 事業場内産業保健スタッフによるケア
    事業場内産業保健スタッフは、セルフケアやラインによるケアが効果的に実施されるように、労働者や管理監督に対する支援を行い、以下の項目を実施するにあたり、中心となって計画を進めていきます。

    ・具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案
    ・個人の健康情報の取扱い
    ・事業場外資源とのネットワークの形成やその窓口
    ・職場復帰における支援

  4. 事業場外資源によるケア ・情報提供や助言を受けるなど、サービスの活用
    ・ネットワークの形成
    ・職場復帰における支援など

3.おわりに

ASDやPTSDがどんな病気であるかを理解することが、支援者としては重要になります。発症者の症状が改善していくように、今回の情報を参考にサポートを行ってみてください。