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早急な治療法確立が求められる「特定疾患・難病」という希少な病

特定疾病・難病は原因不明で発病し治療法が確立していません。
支援の対象範囲が年々変化するため、支援者は情報を常にアップデートする必要があります。この記事では、特定疾患・難病の違いや種類、障害者総合支援法によって受けられる支援をまとめました。

特定疾患・難病の概要

(1)特定疾患・難病とは

【特定疾患】
発症の原因が不明で、治療法が確立していない難病のうち、厚生労働省府が定める疾患を特定疾患といいます。

特定疾患は、病状が慢性的で後遺症が残り社会復帰が厳しい、もしくは不可能な状態です。医療費も高額で経済的・精神的に負担が大きく、そのうえ症例が少ないので医療の確立のために「特定疾患治療研究事業」で研究されています。

【難病】
発病の機構が明らかでなく治療方法が確立していない希少な疾病であって長期の療養を必要とするものと定義されています。

難病のうち、患者の置かれている状況からみて良質かつ適切な医療の確保を図る必要性が高いもので、以下の要件の全てを満たし、厚生労働大臣が定める疾患を指定難病とよび、医療費助成の対象としています。

  • 患者数が本邦において一定の人数※に達しないこと
  • 客観的な診断基準(又はそれに準ずるもの)が確立していること
    ※人口のおおむね千分の一(0.1%)程度に相当する数と厚生労働省令において規定

(2)特定疾患・難病の種類

【特定疾患】
対象疾患は国の定める以下の4疾患です。

  • スモン
  • 難治性肝炎のうち劇症肝炎
  • 重症急性膵炎
  • プリオン病(ヒト由来乾燥硬膜移植によるクロイツフェルト・ヤコブ病に限る)

重症急性膵炎、難治性肝炎のうち劇症肝炎は、平成26年12月31日時点で特定疾患医療受給者として認定されていた方に限り平成27年1月1日以降も医療費の助成対象となります。新たに罹患された方は新規申請をすることができませんのでご注意ください。

平成27年1月1日からは「指定難病医療費助成制度」という新たな医療費助成制度が始まっています。この制度については次の章で説明します。

【難病】
「難病の患者に対する医療等に関する法律」に基づいて国が医療費助成制度の対象としている難病を「指定難病」と呼びます。令和元年7月1日施行の指定難病告示では331疾患が医療助成制度の対象として指定されています。

また、障害者総合支援法における難病は、医療費助成の対象である指定難病よりも広く、2019年7月1日時点では361疾患となっています。
詳しくは厚生労働省の指定難病のページをご覧ください。

特定疾患・難病の患者が受けられる支援

(1)障害総合支援法

  1. 障害者総合支援法の内容
    障害者総合支援法は障害のある人への支援を定めた法律です。障害者自立支援法を改正する形で2013年4月に施行されました。障害者総合支援法は、さまざまな福祉サービスを障害や難病のある人それぞれのニーズに応じて組み合わせ、利用できる仕組みを定めています。
  2. 対象の難病
    対象の難病は2019年7月1日時点では361疾患となっています。障害者総合支援法の対象疾患の一覧は厚生労働省の「障害者総合支援法の対象疾病(難病等)」のページをご覧ください。さらに、障害者総合支援法では障害者手帳制度の対象とならない場合でも、難病患者を福祉支援の対象とすることを定めています。
  3. 障害者手帳により受けられる支援
    難病のある人には、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳を取得している人もいます。身体障害者手帳には、1級から6級の等級があり、身体障害者手帳または精神障害者保健福祉手帳を取得すれば、等級に応じて以下のような支援を受けることができます。・医療費や補装具の費用の助成
    ・所得税・住民税・自動車税の減免や控除
    ・公共交通機関運賃やNHK受信料・携帯電話利用料金、美術館や動物園などの公共施設の入場料、上下水道料金の割引
    ・公営住宅への優先入居
    ・企業の障害者雇用義務の対象としての採用
    ・障害年金の受給が可能(規定された条件を満たす必要がある)

以下の難病では身体障害者手帳の取得実績が多くなっています。
また、もやもや病では脳卒中の症状で精神障害者保健福祉手帳の取得が多くなっています。

<亜急性硬化性全脳炎、脊髄性筋萎縮症、副腎白質ジストロフィー、網膜色素変性症、球脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、多系統萎縮症 特発性大腿骨頭壊死症、悪性関節リウマチ、広範脊柱管狭窄症、肺動脈性肺高血圧症>

※難病は症状が変動するため固定した後遺症による障害とは異なりますが、特に症状が重い時の状態と障害認定基準を踏まえ、医師の診断によって障害者手帳の取得ができる場合があります。

(2)特定疾患・難病患者が受けられる障害福祉サービス

平成25年から、難病等の方々が障害福祉サービス等の対象となりました。対象者は、身体障害者手帳の所持の有無に関わらず、必要と認められた障害福祉サービス等の受給が可能です。

障害者総合支援法による福祉サービスは、「地域生活支援事業」と「自立支援給付」の大きく2つにわかれます。

地域生活支援事業
障害のある方が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、地域の特性や利用者の状況に応じて組まれる事業のことです。自治体によって異なるため、詳しくは自治体のホームページをご覧ください。

自立支援給付
障害者または障害児が、自立した日常生活や社会生活ができるために必要な福祉サービスの給付のことです。
自立支援給付のサービスは以下の通りです。

  • 居宅介護(ホームヘルプ)
  • 重度訪問介護
  • 行動援護
  • 重度障害者等包括支援
  • 児童デイサービス
  • 短期入所(ショートステイ)
  • 療養介護
  • 生活介護
  • 障害者支援施設での夜間ケア等(施設入所支援)
  • 共同生活介護(ケアホーム)
  • 自立訓練(機能訓練・生活訓練)
  • 就労移行支援
  • 就労継続支援(A型・B型)
  • 共同生活援助(グループホーム)

(3)指定難病医療費助成制度について

指定難病患者の負担を軽減するため、医療費等の自己負担に上限を設けた制度です。指定難病に認定された患者の自己負担が上限額を超えた場合に、その超えた金額分を国・都道府県が特定医療費として負担し、患者の自己負担は上限額までとなります。

<指定難病における指定難病の医療費助成の認定基準>
下記のいずれかを満たす者

  • 指定難病の診断基準を満たし、かつ重症度分類 SLEDAIスコア4点以上の患者
  • 高額な医療を継続することが必要な患者(軽度高額該当)
    (指定難病の医療費総額が33,330円を超える月が過去1年間に3回以上ある場合)

おわりに

この記事では、特定疾患と難病について解説しました。制度の内容や法律は頻繁に変わるため、注意が必要です。この記事を参考に、特定疾患と難病の支援をより充実させてください。

※はたらくBASEでは、記事公開した時点での法律や制度に則って記事を執筆しております。新しく事業所を開業する場合や、加算などを検討する場合は、最新の法律や、地域の障害福祉サービスを所管する窓口に制度や条件等をご確認ください。

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