福祉サービスの法律・条約
(画像=はたらくBASE)

法律と条約は障害福祉サービスの柱です。広く知られる合理的配慮も障害者権利条約が採択されたことがきっかけでした。 福祉サービスの起源と変遷、そして障害者総合支援法や障害者差別解消法などの福祉サービスに強い影響を与えた法律や条約を紹介します。

目次

  1. 1.福祉サービスの始まり
    1. 社会福祉事業の起源は、聖徳太子にあり
    2. 認知度が上がっている「合理的配慮」
    3. 障害者権利条約とは
  2. 2.福祉サービスに関係する法律と条約
    1. ①障害者基本法
    2. ②障害者総合支援法
    3. ③障害者差別解消法
    4. ④障害者虐待防止法
  3. 3.まとめ

1.福祉サービスの始まり

今では当たり前に存在する福祉サービスですが、このようなサービスや福祉に関する考えはいつごろ誕生し、どのように普及してきたのでしょうか?

社会福祉事業の起源は、聖徳太子にあり

社会福祉事業のルーツは聖徳太子が開いた悲田院にまでさかのぼると言われており、そこから生活に困っている人びとを救済する取り組みが営まれてきました。

しかし、社会福祉事業が国の制度・施策として位置づけられるのは、明治7年に窮民救済を目的とした「恤救規則」が制定されてからです。

その後、終戦直後から戦災孤児、傷病者、失業者等の救済のために国が「児童福祉法」「身体障害者福祉法」「生活保護法」などの各福祉法が制定され、今日の社会福祉の基礎が整いました。

そして各法に位置づけられた施策を推進するために1990年に「社会福祉事業法」が制定され、現在の社会福祉事業が法制化されました。現在では、より多くの人のニーズに合ったサービスを提供できるよう、福祉サービスに関する法律は細分化されています。

認知度が上がっている「合理的配慮」

私たちが福祉を考える上で欠かせない理念の一つに「合理的配慮」があります。

合理的配慮は、障害がある人であっても、障害のない人と同様に社会活動に参加し、自分らしく生きていくために考案された理念です。

障害のある人が障害のない人と平等に人権を享受し生活できるよう、周囲の人が個人の障害やその他の事情に応じた対応を行うことを推進しています。2006年に国連で採択された障害者権利条約(障害者の権利に関する条約)をもとにこの理念が制定されました。

障害者権利条約とは

「障害者権利条約」とは、障害に基づくあらゆる差別の禁止や、障害のある人の基本的人権を促進・保護すること、個人の尊厳を尊重することを目的とした国際的な指標です。2006年12月に採択され、日本は2007年に障害者権利条約に批准しました。

そして2008年、批准国が20カ国に達したことにより「障害者の権利条約」は発効されました。

「障害者の権利条約」では、条約に基づく施策が行われているかを国内で監視することになっており、内閣府に置かれた障害者政策委員会がその役割を担っています。

また、条約に基づく義務を遂行するために、取り組んだ内容は国際的な組織である「障害者権利委員会」に報告しなければなりません。これらの仕組みによって、障害者政策の拡充が行われています。

このように世界的な条約にも批准している日本ですが、具体的にはどのようなサービスや法律があるのでしょうか?また、サービスに関する法律にはどのような条約が関係しているのでしょうか?

2.福祉サービスに関係する法律と条約

以下では福祉サービスに関する法律の概要や制定の背景についてご紹介します。

①障害者基本法

障害者基本法は、障害者のための施策に関する基本的な事項を定めた法律です。

障害者の自立と社会、経済、文化などのあらゆる分野への参加を促すことを目的とし、“障害者”の対象に新たに精神障害者を加えている点などが特徴です。

2004年(平成16年)6月には法律の一部改正法がなされ、法律の目的、障害者の定義、基本的理念などに関わる部分が変更されました。この改正で、基本理念は「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別すること、その他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」と定められました。

改正の背景には「完全参加と平等」がテーマである1981年の国際障害者年があります。国際障害者年とは国連総会が1981年に宣言したもので、障害者が社会に参加する権利と機会を持つことを目的としています。

日本は、障害者問題の解決をしなければ国際的な信用問題になると判断して、障害者に関する施策の作成や国際障害者年推進本部の総理府(現内閣府)設置などを行いました。その解決策の一つが障害者基本法成立でした。

②障害者総合支援法

障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援する法律)は平成25年4月1日から施行されました。

本法律は「障害者自立支援法」(平成18年4月施行)から名前が改められると同時に、共生の実現に向けて新たな障害保険福祉施策を行うために法律の整備を行い、障害者支援を総合的・計画的に進めることや難病患者も障害者とする旨が加えられました。

また、障害福祉サービスの充実等をはかるために重度訪問介護の対象拡大、ケアホームのグループホームへの一本化、市町村への地域移行支援の対象拡大、コミュニケーション支援や地域生活支援事業の追加などを定めています。

さらに、計画的な福祉サービスの提供のために、市町村(または都道府県)による障害福祉計画なども定めています。障害者総合支援法は障害者や障害児が他の国民と同じように、自立した社会生活を送ることを目的に制定された法律です。

障害者総合支援法のはじまりは支援費制度であり、2003年に公布されました。しかし予想以上のサービス利用による財源不足やサービス利用料に地域差があるなどの問題が発生し、この支援費制度は施行からわずか数年で改正を余儀なくされました。

これらの課題を解決するための改正法として施行されたのが2006年の「障害者自立支援法」です。しかしこの法律でも多くの問題が発生し、違憲訴訟が起こりました。

この訴訟の和解の際に取り交わされた合意に基づいて施行されたのが、現在の「障害者総合支援法」です。

③障害者差別解消法

障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)は2013年6月19日に成立しました。

障害者差別解消法は、障害者基本法の基本的な理念にのっとり、障害者基本法第4条の「差別の禁止」の規定をより具体化するものとして位置づけられました。

行政機関や民間事業者に障害を理由とする差別的な扱いを禁止するとともに、社会的障壁の除去を行う際には合理的配慮を求めるという内容になっています。行政機関は合理的配慮を行うことが義務づけられていますが、民間事業者は努力義務とされています。

④障害者虐待防止法

障害者虐待防止法(障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律)は、障害者への虐待の社会問題化を背景に2012年6月に成立し、2013年10月より施行されました。

法案は「障害者虐待」を、家庭内に限らず福祉施設や職場での虐待も指すとし、その上で発見者は市町村に通報しなければならないとしています。

市町村は通報を元に家庭への立ち入り調査や一時保護ができ、必要に応じて都道府県や労働局に通報するよう定められています。

また、虐待の現場が施設の場合は都道府県が、職場の場合は労働局が指導するよう規定しています。虐待対応の窓口となる「市町村障害者虐待防止センター」や「都道府県障害者権利擁護センター」の設置も義務付けています。

この法律が制定された背景には2003年に発覚した「カリタスの家事件」があります。

施設長が熱湯のコーヒーを無理やり飲ませて障害者に大やけどを負わせたこの事件は、施設が発達障害者支援センターの委託を受けている県内唯一の障害者専門施設だったこともあり、大きな衝撃を与えました。

この事件をきっかけに障害者に対する虐待防止への声が高まり、障害者虐待防止法の制定にいたりました。

3.まとめ

福祉サービスに関する法律には、世界的な条約や悲惨な事件など多くの背景があります。私たちがこれまで述べたような法律を意識して過ごす機会は多くはありませんが、福祉事業のベースを構成する法律を知ることで、福祉への理解が深まれば幸いです。