通勤を手助けする処置の費用を助成する仕組みは8種類あります。駐車場賃借にも使えるとても便利な制度の反面、要項が多く条件も煩雑です。
8種類の助成金を一つひとつ丁寧に解説し、制度の概要から金額まで複雑な内容をわかりやすく伝えます。
この記事の目次
重度障害者等通勤対策助成金とは?
重度障害者等通勤対策助成金は、以下8つの種類から構成されています。
- 重度障害者等用住宅の賃貸助成金
- 指導員の配置助成金
- 住宅手当の支払助成金
- 通勤用バスの購入助成金
- 通勤用バス運転従事者委嘱助成金
- 通勤援助者委嘱助成金
- 駐車場の賃借助成金
- 通勤用自転車の購入助成金
これらは、それぞれ実施を行った措置によって受給額や支援対象となる事業主が異なります。
支援対象従業員の要件
支援対象従業員の要件は以下の通りです。
通勤用自動車の購入助成金以外の全て
- 重度身体障害者
- 3級でどちらか
⇨視覚障害者、体幹機能障害者 - 3級または4級
⇨下肢障害者、乳幼児以前の非進行性病変による移動機能障害者 - 5級以下で重複
⇨下肢障害、大幹機能障害、乳幼児期以前の非進行性脳病変による移動機能障害 - 知的障害者
- 精神障害者
通勤用自動車の購入助成金のみ
- 2級以上で下記のいずれかを持つ
⇨上肢障害者、乳幼児期以前の乳幼児以前の非進行性の脳病変による上肢機能障害者 - 3級以上(+2級以上の短時間労働者)で下記のいずれかを持つ
⇨大幹機能障害者、内部障害者 - 4級以上(+2級以上の短時間労働者)
⇨下肢障害者、乳幼児以前の非進行性病変による移動機能障害者 - 5級以下で重複
⇨下肢障害、大幹機能障害、乳幼児期以前の非進行性脳病変による移動機能障害
対象従業員要件の3つの注意点
- 単に障害があるという理由だけでは支給対象とならない可能性があります。対象障害者の障害特性や通勤状況を見て総合的に判断されます。
- 通勤に困難である理由が、障害者以外の労働者にとっても困難であるなど、対象障害者の障害特性による理由以外が含まれる場合は支給対象にはなりません。
- 「通勤手段に関わる助成金」は「住宅に関わる助成金」と併せて受給することはできません。
8種類の助成金について
各助成金の詳細について見ていきましょう。以下の3つの観点からご説明します。
- 対象となる措置
- 助成額と期間
- 支給対象となる措置
※支給対象となる措置に関しては特に重要な措置をご紹介します。
1 重度障害者等用住宅の賃借助成金
- 対象となる措置
重度障害者等を入居させるための特別な構造または設備を備えた住宅の賃借。 - 助成額と期限
助成額:実施費用の3/4
上限額:(世帯)月10万円、(単身)月8万円
支給期間:10年間 - 支給対象となる措置
・対象障害者の障害特性に応じた構造・設備を備えている住宅
・申請された住宅から事務所まで、徒歩や車椅子等で10分程度の距離
・下記のいずれかと同居していること
A.配偶者
B.6親等以内の血族の者
C.3親等以内の姻族の者
D.AからC以外の者で機構がやむを得ないと認める者
2 指導員の配置助成金
- 対象となる措置
重度障害者等が5人以上入居する住宅に指導員を配置。 - 助成額と期限
助成額:実施費用の3/4
上限額:月15万円
支給期間:10年間 - 支給対象となる措置
5人以上の支給対象障害者を同一の住宅に入居させなければ、雇用の継続を図ることが困難である事業
3 住宅手当の支払助成金
- 対象となる措置
重度障害者等自らが住宅を借り受け、賃料を支払っている場合に、その者に対して、重度障害者等以外の労働者が住宅を借り受けた場合に通常支払われる住宅手当の限度額を超えて住宅手当を支給 。 - 助成額と期限
助成額:実施費用の3/4
上限額:対象者1人あたり月6万円
支給期間:10年間 - 支給対象となる措置
・支給対象障害者自らが通勤を容易とするために新規に住宅を賃借し、その賃料を支払っている住宅であること。
4 通勤用バスの購入助成金
- 対象となる措置
通勤する5人以上の重度障害者等のために通勤用バスを購入 - 助成額と期限
助成額:実施費用の3/4
上限額:バス1台につき700万円まで
5 通勤用バス運転従事者の委嘱助成金
- 対象となる措置
通勤する5人以上の重度障害者等のために通勤用バスの運転に従事する者を委嘱。 - 助成額と期限
助成額:実施費用の3/4
上限額:委嘱1回につき6000円
支給期間:10年間
6 通勤援助者の委嘱助成金
- 対象となる措置
重度障害者等の通勤(公共交通機関を利用する通勤に限ります。)を容易にするための指導、援助等を行う通勤援助者を委嘱。 - 助成額と期限
助成額:実施費用の3/4
上限額:委嘱1回につき2000円、障害者の交通費3万円
支給期間:1ヶ月 - 支給対象となる措置
通勤が困難な5人以上の障害者が下記の条件を満たす場合に通勤援助者を委嘱する。A.支給対象となる新規の障害者を雇用した場合
B.採用後に障害者となった者が職場復帰する場合
C.支給対象障害者の障害が悪化し、通勤を容易にする必要がある場合
D.公共交通機関の廃止等に伴い、支給対象障害者が通勤経路の変更を余儀なくされた場合
E.住居の転居に伴い、支給対象障害者が通勤経路の変更を余儀なくされた場合
F.その他、通勤援助者が必要と認められた場合
7 駐車場の賃借助成金
- 対象となる措置
自ら運転する自動車により通勤することが必要な重度障害者等に使用させるために駐車場を賃借。 - 助成額と期限
助成額:実施費用の3/4
上限額:月5万円
支給期間:10年間 - 支給対象となる措置
貸借する駐車場の要件例A.新規に賃借する駐車場であること
B.対象者の障害の種類、程度を十分考慮した通勤環境であること
C.対象者の通勤のために使用すること
8 通勤用自動車の購入助成金
- 対象となる措置
自ら運転する自動車により通勤することが必要な重度障害者等のために通勤用自動車を購入。 - 助成額と期限
助成額:実施費用の3/4
上限額:1台150万円 - 支給対象となる措置
A. 支給対象事業主自らが所有するものであること
B. 「小型自動車」及び「軽自動車」であること
C. 使用用途は、支給対象障害者の通勤に限定すること
支給額について
支給額は以下の算定式にて算定されます。
【算定式】支給額=支給対象費用×助成率
この算定式によって算定された支給額が支給限度額を超える場合、支給限度額が支給額となります。
おわりに
今回は、重度の障害を持った従業員を雇用している企業に対して、通勤の手助けに必要な費用を助成する「重度障害者等通勤対策助成金」について解説してきました。助成金の種類によって異なる要件の違いを把握し、ぜひ障害者雇用を推し進める上で活用してください。