サービス管理責任者は資格取得までにいかに経験と知識を身につけるかがポイントです。この記事では、求められるスキルやサビ管になるまでの期間の学びかた、サビ管候補の育てかたなど、サビ管になって人生の選択肢を広げるために必要な情報を提供します。
サービス管理責任者を目指すときに最初に押さえておきたいスキル
サービス管理責任者(※以降、サビ管と表記)とは、障害福祉サービス事業所で利用者への支援や職員へのマネジメント業務など、事業所全体を管理する職業です。(サビ管のなりかたや仕事内容などについて詳しく知りたいかたは障害福祉サービスに重要な役目を果たす「サービス管理責任者」 はたらくBASEをご覧ください)
とても重要な仕事のため、サビ管になるためには数年の実務経験が必要となるものの、要件を満たしてしまえば資格自体は比較的簡単に取得できます。
しかし、サビ管になるための研修を受けたからといって、すぐに専門性の高い支援ができるわけではありません。
そのため事業者側もこれからサビ管を目指すかたも、資格を取得するまでに「どうやってスキルを向上させるか」「サビ管になる前にいかに経験を積むか」を考えたほうが良いでしょう。
所属している障害福祉サービスの指定基準を押さえる
サビ管を目指すうえでまず押さえたいのは、所属する障害福祉サービスの指定基準を理解することです。
指定基準には、「法人基準」「人員基準」「設備基準」「運営基準」など、障害福祉サービスを運営するうえで必ず満たさないといけない基本的な事柄が書かれています。
サービス対象者や職員体制、建物に必要な設備などの指定基準は、就労継続支援B型やグループホームなど事業形態によって異なります。
これらは事業所を開設するうえでクリアしないといけない必須条件です。どのような基準を満たせば運営できるかが書いてある「障害者総合支援法 事業者ハンドブック 指定基準編」で内容を把握したほうが良いでしょう。
指定基準を満たしているかどうかはサビ管が把握し管理しなければいけません。障害福祉サービスが税金を使って運営される制度ビジネスである以上「制度を知らなかった」は行政には通用しません。
事業所を正しく運営できているかを常に把握しておくためには、自分たちの事業形態はどのような基準で設計されているのかを理解しておく必要があるのです。
実地指導や自主点検表の自主点検、加算の重要性を理解する
指定基準のほかに、サビ管が押さえておきたい事柄は実地指導やそのために必要な自主点検表の確認です。
実地指導とは自治体が事業所に直接出向き、管轄する事業所が障害者総合支援法で定められた基準を順守した経営ができているかを調査する制度です。
自主点検表とは実地指導で必要となる資料です。自主点検表を読み込めば事業所が不備なく運営できているかを確認できるため、数年に一度の実地指導のときだけでなく、年に一度は自主点検表を使った自主点検が義務付けられています。(実地指導と自主点検表について詳しく知りたいかたは「あなたの事業所は大丈夫? かならずやってくる実地指導 – はたらくBASE」「自主点検表で事業所の健全性をはかろう – はたらくBASE」をご覧ください)
実地指導や自主点検表の自主点検の重要性を理解できていなければ不備が生じる可能性があり、最悪の場合は指定取り消しになってしまうとてもシビアなものです。
もうひとつ、サビ管が押さえるべき重要な業務があります。それは事業所がどのような加算を取っているのかの把握です。
サビ管は事業所を運営するために、勤めている事業所が取得している、または取得できるであろう加算とそれを得るための根拠を理解しないといけません。
仮に同じ就労継続支援B型という事業形態であっても、事業所によって算定している加算が変わると収益に差がでます。
指定基準や自主点検表の読み込みなど基本的な分野はどこの事業所も根本は同じであるため、事業所ごとに変わる可能性がある加算については特に注意したほうがいいでしょう。
加算や実地指導の解釈でわからないところは行政に聞きに行く
事業所を運営するうえで、サビ管が変わるなどの人材の異動で加算に抜けや漏れが出てしまってはいけません。
加算を継続するためにはやはり、算定している加算の根拠は何かを十分に理解しておくことです。
すでに取得している加算については、要件を満たして算定しているはずです。もし、新たな加算を取得する場合は、事前に確認し取得することをおすすめします。「〇〇の加算を取るためには□□という取り組みで間違いないでしょうか」など担当者に直接、聞くほうがいいでしょう。
実地指導の解釈についても同様です。行政が作成する文章は「〇〇等」というように、曖昧な表現で書かれることがあります。「〇〇等」をどう解釈するか迷ったときも行政への確認が大切です。
ほかの事業所や外部機関と横の繋がりを作る
勤めている事業所以外で相談ができる横の繋がりがあるかどうかも重要です。
仮に先輩のサビ管から色々と教えてもらえる体制がないのであれば、一人でさまざまな業務を引き受ける必要があります。
そのときにほかの事業所とのつながりがあると、たとえば制度に対する解釈などの情報を事業所間で共有することが可能です。
基本的に外部と関わるのはサビ管か管理責任者です。ほかの事業所と接点を持ったり研修に参加したりするときは事業所の代表者としての側面が強いので、一般の職員が関わりを持つ機会は少ないのです。
しかし反対に、経験のため一般の職員に率先して外部との関わりを持たせる事業所もあるかもしれません。
そのため、一概にサビ管になってからでないと横の繋がりができないかというとそうではなく、サビ管になる前に横の繋がりを構築できるかどうかは事業所の方針によると思います。
ただどちらの場合であれ、サビ管になって最初に押さえておかないといけない事柄のひとつに、相談支援事業所への挨拶があります。
「わたしが新しく〇〇事業所のサビ管になりました」という挨拶は営業にもなります。自分の存在を周知してもらうのは絶対に必要な手順です。それを積み重ねていけば横の繋がりは次第にできてくると思います。
サービス管理責任者は資格取得までのプロセスが大切
サビ管の資格は、障害福祉サービスで数年間の実務経験がなければ取得できません。そのため、経験年数に関わらずサビ管であれば知っていて当然という目で見られるように感じます。
ですが、サビ管になる前に先に述べたようなポイントの重要性を認識していなければ、実際にサビ管になってから業務の進めかたでとても悩むと思います。
サビ管になってから困らないためには、サビ管になるまでのプロセスをどう過ごすかが大事です。「サビ管になったらこれをする」ではなく、いずれサビ管になるつもりで日々の業務に取り組むことが、サビ管を目指す人にとって大切な感覚です。
事業所はサビ管になりたい人を見極め、育てる
福祉業界は以前に比べ間口が広くなり、異業種から障害福祉サービス分野に飛び込んでくるかたが増えています。
そのかたたちのなかには、職業指導員や生活支援員などの職種で何年か経験を積めばサビ管になれる条件を満たせるという事実を知らない人もいるかもしれません。
そのため、新しく入ってきたかたには、いずれサビ管になりたいのかどうかを聞くほうがいいでしょう。そこで「なりたい」という答えが返ってくるのか曖昧な返答なのかでは印象がだいぶ異なります。
意欲があるかどうかは普段の働きかたを見ているとわかるものの、まずはサビ管になりたいのかを聞くことがスタートかもしれません。事業所側は自分たちが新しいサビ管を育てていくという意識を常に持っておかないといけないと思います。
現職のサビ管のかたは特に、役職をもらっている以上は部下たちがいずれサビ管になったときに困らないよう指導する必要があると感じますし、優秀なサビ管を輩出できれば事業所のひとつのブランドにもつながります。
ですがサビ管の資格を取るモチベーションのないかたに時間や労力を費やす余裕はないかもしれません。
サビ管の資格は実務経験を積むと比較的楽に取得できるものの、資格を取るつもりで日々を過ごしている人とそうでない人ではどうしても能力に差があります。
したがって、経験を積めば資格取得の要件を満たせることを伝え、意欲のあるかたを積極的に育てるほうがいいでしょう。
これからサビ管を目指す人は、現場にいるサビ管の業務をしっかり吸収することが大切だと思います。数年ほどサビ管のもとで業務に携わるなかで、現場のサビ管がどういう業務をしているか、何に気をつけているのかを学ぶ姿勢が大事です。
個別支援計画や実地指導などの業務をサビ管候補に携わってもらう
実際にサビ管になりたいかたを育てるには、現場のサビ管が指定基準や実地指導、個別支援計画などの業務を、そのかたと一緒に進めていく方法がいいと思います。
たとえば個別支援計画はサビ管の業務であると定められていますが、文言のなかに「担当者を交えて作ったか」という主旨の内容も書いてあります。
サビ管以外が関わることは可能なので、サビ管を目指しているかたに実際に個別支援計画を作るプロセスに携わってもらい、現場のサビ管と一緒に作り上げるのです。
サビ管を目指しているかたが携わった書類などを現場のサビ管がチェックしたり指導したりして精度を高めていきます。そうすることで、定期的に基本的な業務を教えられると思います。
また、実地指導を乗り切るには重要性を理解し日ごろから正しい記録の記入を求められるのでその都度、現場のサビ管が気をつけているポイントを教えられます。
教えてもらう側も、資格を取得する前であっても生活支援員などの別の立場で実地指導を経験すると思うので、そのときにノウハウをできるだけ吸収しておいたほうがいいでしょう。
やる気のある人材に中長期的な指導をしておけば、そのかたがサビ管になったころには改めて教えることはほとんどなく、自然と一人前になっていると思います。
サビ管になると待遇が向上し人生の選択肢も広がる
サビ管は事業所の看板です。サビ管になると「〇〇事業所のサビ管は誰々」と外部から認識されるので、責任感ややりがいも増します。
また、給料などが全体的に改善されるためキャリアアップや待遇面を考慮した場合、現在の環境に満足していないかたにとっては、資格を取得し働く選択は現実的な一手でしょう。
サビ管の資格を取れば、待遇面だけでなく働くうえでの選択肢も増えます。たとえば法人の種類によっては従業員の努力に関わらず昇給額が一定である場合があります。
安定した働きかたである反面、貢献度に応じてインセンティブが欲しいと思うかたもいるでしょう。
福祉業界への民間企業の参入が増え会社の絶対数は増加したので、成果を上げたぶんだけ収入を得られる会社もあると思います。サビ管の求人は多く、能力があれば事業所はそのかたを採用したいと考えるでしょう。
待遇が劇的に向上するわけではなくても、今よりもいい環境や収入の職場で働けると思います。密度の濃い経験を積み資格を取得すれば選択肢が広がり、働く場所も選びやすい時代になってきています。
場合によっては起業する人も出てきたため、サビ管の資格を取ることでの選択肢はとても多いように感じます。
障害福祉サービスで働くかたはまずサビ管を目指すのが必須でしょう。そして実際にサビ管の資格を取得したあとは待遇ややりがい、起業など人生の選択肢が広がるというのが最大のメリットです。
おわりに
サビ管は事業所の業務を主として担っていく立場であるため、求められるスキルも多くなります。
経験をしっかり積んでサビ管になったのか、資格取得の権利を得たからひとまずサビ管になったのかでは働く姿勢や能力に大きな差が生まれます。
指定基準や自主点検表などの基本的な部分だけでなく、わからない箇所は行政に聞きに行くなどの対処法を身につけることが大切です。
資格取得までに様々な知識を学ぶ姿勢を常に持ち実際に行動すれば、サビ管になったあとの選択肢は格段に広がるでしょう。