RRR
(写真=RRR)

福岡県飯塚市にある就労継続支援B型事業所「RRR(スリーアール)」で管理者を務める田中健太さん(40歳)。

「福祉っぽくない福祉」をコンセプトに掲げ、映像制作とドリンク販売を中心とした事業を展開。利用者の好きなことや得意なことを仕事につなげることに力を注いでいます。

現在、鹿児島市内の就労継続支援B型事業所に通う私もたまたまではありますが、趣味の延長線上でやっていた画像編集のスキルやパソコンの知識が事業所での仕事に生かされ、自身の自己肯定感の向上に一役買っていると感じています。そんなことから「RRR」のコンセプトにとても興味を持ち、田中さんに話を伺いました。

目次

  1. 映像制作を軸に3人で事業所を開設
  2. 利用者の感性を生かした動画制作
  3. 利用者の「好き」や「得意」を仕事につなげる
  4. 大切なのは固定概念に縛られず、学び続けること
  5. インタビューを終えて

映像制作を軸に3人で事業所を開設

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就労継続支援事業所「RRR」開設メンバーの3人(写真=RRR)

就労継続支援B型事業所「RRR」を立ち上げたのは、精神保健福祉士として病院や就労継続支援B型事業所で働いていた田中さん(写真中央)と、映像制作の業界で働いた後、就労継続支援B型事業所で働いていた中川原守さん(左)、事務職として就労継続支援B型事業所で働いていた佐藤佳代さん(右)の3人。

これまで同じ事業所で働いてきましたが、今後の就労継続支援を考える上で「福祉っぽくない福祉」をやっていきたいという思いが一致。「合同会社RRRエンターテインメント」を設立し、2021年1月、就労継続支援B型事業所「RRR」の運営を始めました。

「以前勤めていた事業所では内職や施設外就労が中心だったので、映像制作や編集、YouTubeチャンネルなどの情報発信に本腰を入れてやるのは難しいと感じていました。そこで企業の方々からの依頼で動画の制作をしたり、商店街の中でドリンクショップをやったり、利用者の方たちと一緒に福祉っぽくないことをやっていけたらと思い、動き出すことにしたんです」

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(画像=「ウサギの精神保健福祉士チャンネル」YouTubeチャンネル)

実は、精神保健福祉士として働く田中さんは障害者福祉をテーマにしたYouTuberとしても知られる存在。

2019年から「ウサギの精神保健福祉士チャンネル」というYouTubeチャンネルで情報発信をスタート。精神保健福祉士として10年以上キャリアのあるウサギが就労継続支援B型事業所で働く中での気づきや役立つ情報を分かりやすく伝える動画が人気となり、2022年2月現在、チャンネル登録者数は9390人に上ります。

「福祉の世界で働く一人として社会に何か伝えていきたいという思いから、全く個人的な活動としてYouTubeを始めました。仕事が終わった後、自宅で撮影・編集するんですが、最初は試行錯誤の連続でできないことばかり。当時勤めていた事業所の利用者さんで動画編集が得意な方に結構教えてもらいました。

実際、YouTubeを始めてみると、利用者さんの中には映像制作やSNSの発信に興味があり、得意な人が結構いるということが分かったんですよね。そうしたことも事業所開設に動き出すきっかけになりました」

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(画像=「ウサギの精神保健福祉士チャンネル」YouTube動画切り抜き)

田中さんのYou Tube動画▶ ウサギの精神保健福祉士チャンネル

利用者の感性を生かした動画制作

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撮影機材の数々(写真=RRR)

「RRR」の事業所には360度グリーンバックを敷くことのできるスタジオが設けられ、多彩な撮影設備がそろっています。

映像の撮影や編集のノウハウを利用者に教えるのは、会社の代表を務める中川原さん。テレビや映画、ミュージックビデオなど、さまざまな制作現場で働いてきた経験を生かし、利用者と一緒に撮影・編集を行っています。

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編集作業のサポートに当たる中川原守さん(写真=RRR)

編集作業では中川原さんがサポートしつつも、利用者の感性を生かしながら進めるのがRRR流。

「うちの事業所は私たちスタッフだけで事業を考えていくというより、利用者さんも含めて一緒に考えていくようにしています。利用者さんに得意分野があれば、スタッフにも教えてもらいながら一緒に事業所を大きくしていきたいというのが私たちの考えなんです」と田中さん。

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動画編集の様子(写真=RRR)

特に力を入れているのは、地元企業の依頼を受けて取り組む動画制作。この一年で、ミシンの製造会社のレクチャービデオ、地元のアイドルグループのミュージックビデオ、商店街の店舗紹介動画など、さまざまな方面から依頼を受け、制作を行ってきました。

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撮影の様子(写真=RRR)

「RRRのある福岡県飯塚市は地方都市で映像制作をやっている会社が少ないこともあって、『動画の制作をしてくれるんだったら、お願いしたい』とおっしゃる方が多いんです。ありがたいことに、福祉施設だからという理由でアプローチしてくるクライアントさんは少ないですね」

利用者の「好き」や「得意」を仕事につなげる

「RRR」では何らかの理由で自宅に引きこもりがちな人、障害や病気で働きたくても働けない人が通所し、趣味や得意なことで仕事につながる道を見つけていくことにも力を入れています。

「好きなことや得意なことがある人たちに集まってほしいなと思っていますが、それが見つけられないという方には一緒に見つけていく作業もやっていけたら、と思っています」

実際、アクセサリーを家で作ることが得意な利用者の作品はドリンクショップで販売。将来的にネット販売も視野に入れています。

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ドリンクショップでの作品販売の様子(写真=RRR)

また、福祉っぽくない福祉を実現するために、ドリンクのテイクアウト販売を行う事業所では、おしゃれな外観を意識。

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ドリンクショップ外観(写真=RRR)

ドリンクもカップに施されたロゴや商品の色合いをインスタ映えするようなデザインにし、福祉製品として見られない工夫を施しています。

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ドリンクショップ内観(写真=RRR)

大切なのは固定概念に縛られず、学び続けること

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RRR管理者の田中健太さん(写真=はたらくBASE編集部)

就労継続支援事業所を開設して1年。「日々学ぶことがたくさんある」と田中さん。

「どうしても福祉の業界ってこれまでの固定概念で運営しがちですが、これからの時代、新しいことにも積極的に取り組んでいくことが求められていると思います。特にコロナ禍で思い知った部分もありますが、世の中の価値観は絶えず変わっていきますし、どれが正解というわけでもないので試行錯誤に終わりはありません。でも、だからこそ勉強し続けていくことが大切だと思います」

インタビューの最後に、田中さんはこう締めくくってくれました。

「自分が経営に携わる立場になってみて、理想論だけ語っていても事業所を軌道に乗せることはできないということを痛感しました。でも、僕がいち精神保健福祉士だったときに思い描いていた理想は常に大事にしなきゃと思うんです。

事業所名の『RRR』はRespect(尊重する)・Recovery(取り戻す)・Realize(実現する)の頭文字をとったもの。障がいのある人もそうでない人も一緒になって従来の福祉の価値観とは違う新時代の価値観を一緒に作り上げていきたいので、常にアンテナを張り、新しいことに挑戦していきたいですね」

インタビューを終えて

今回、作業内容が映像撮影・編集を中心としたB型就労支援事業所という珍しさから、インタビューを依頼しましたが、実際にお話を伺うと、利用者さんの「好き」や「得意なこと」を生かし、伸ばすことに努めていること、利用者の方がスタッフに、また利用者さん同士で教え合う環境ができているところがすごくいいな、と興味深く感じました。

私自身もそうでしたが、さまざまな理由や問題を抱えてそれと向き合いながらも自立に向かうためのステップアップとして、就労継続支援事業所を利用される方が多いと思います。そして利用していく中でこうした体験の積み重ねが次のステップへつながる重要な鍵となってくると思います。

今後、新たに通所する利用者の方々の得意分野を生かして新しいことにもどんどん挑戦していきたいというRRR 。これからも「福祉っぽくない福祉」を追求していただきたいです。